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インスタグラムが「いいね疲れ」の解消図る、背景には何があるのか

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
インスタグラムで500万人超のフォロワーがいるモデルのカーリー・クロス(写真:REX FEATURES/アフロ)

米フェイスブック傘下の写真共有サービス、インスタグラム(Instagram)は8月2日、投稿した写真や動画が24時間で消える「インスタグラム・ストーリーズ」と呼ぶ機能を追加したと発表した

この機能は同社のスマートフォン向けアプリを最新版にすると利用できる。同社は今後数週間かけて最新版を全世界で利用できるようにするとしている。

「いいね!」やコメント機能はなし

インスタグラムのアプリでは、ホーム画面にフォローしている人や自分の写真が表示されるが、新たなストーリーズではこれら従来の写真とは異なり、ホーム画面上部に表示されるユーザーのプロフィール写真付きアイコンをタップすると利用できる。

そして、こうした一連の写真や動画は前述のとおり24時間で消える。また従来の投稿写真や動画のように「いいね!」を付けたり、コメントを残すことはできない。

その代わり、何かコメントしたい場合は、インスタグラムの「ダイレクト」機能で、プライベートメッセージを送ることができるという。

このほか、写真や動画を投稿する場合は、ホーム画面左にある「+」アイコンをタップすると、その場で撮影したり、画面をスワイプして、これまでに撮影した写真/動画を選んだりすることができる。

「スナップチャットのカーボンコピー」?

ただ、この新機能は写真メッセージサービス、米スナップチャット(Snapchat)の機能とそっくりだと指摘されている。

インスタグラムの新機能「ストーリーズ」  スナップチャットのカーボンコピーと揶揄される
インスタグラムの新機能「ストーリーズ」 スナップチャットのカーボンコピーと揶揄される

米ニューヨーク・タイムズによると、その名称もスナップチャットの写真・動画共有機能の「ストーリーズ」と同じであることから、「(インスタグラムの新機能は)スナップチャットのカーボンコピーだ」などと揶揄されているという。

しかし、インスタグラムがこうして競合そっくりの機能を導入したのには、いくつか理由があるようだ。

米ウォールストリート・ジャーナルによると、米パイパー・ジャフリーが今年4月に行った米国のティーンエージャーを対象にしたアンケート調査で、好きなソーシャルメディアのアプリとしてスナップチャットを一番に挙げた人は28%と、インスタグラムの27%を上回った。

半年前に行った同様の調査ではインスタグラムが33%で、スナップチャットの19%を上回っていたが、ここに来て若年層の間でスナップチャットの人気が急速に高まっているという。

「インスタグラムでは気軽に投稿できない」若者心理

またこうした若者をはじめとする多くのユーザーは、苦心して撮影したり、加工したりして完成させたベストショット写真をインスタグラムに投稿して楽しむ一方、普段の何気ない写真は、やがて消えてしまうスナップチャットに投稿しているという。

ウォールストリート・ジャーナルの記事は、その理由について、インスタグラムで「いいね!」をもらわなければならないというティーンエージャーのプレッシャーが相当のものだからだと伝えている。

このためか、多くのティーンエージャーはインスタグラムで「いいね!」が多く付かなかった写真を削除しているという。

その具体的な数値についてインスタグラムは明らかにしていないが、同社の共同創業者で最高経営責任者(CEO)を務めるケビン・シストロム氏は「かなり高い頻度」と述べているという。

そうした中、インスタグラムは若年層ユーザーに、評判を気にすることなく気軽に写真や動画を投稿してもらいたいと考えている。

シストロムCEOは「1週間に1回を投稿する人が、1日5〜10回投稿するようになる」とし、今回の新機能に期待しているとウォールストリート・ジャーナルは伝えている。

JBpress:2016年8月4日号に掲載/原題「インスタグラムがライバルとそっくりの機能導入、24時間で消える写真共有が人気の理由」)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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