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ストリーミングで復活した米音楽産業

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
FBを描いた映画、ソーシャル・ネットワークに出演した女優のルーニー・マーラさん(写真:Splash/アフロ)

全米レコード協会(RIAA)がこのほどまとめた米国音楽販売統計(PDF書類)によると、今年上期(1〜6月)における同国の音楽売上高は小売りベースで34億ドル(約3458億円)となり、1年前から8.1%増加した。

ストリーミングの売り上げは57%増

これに先立ちRIAAが公表していた昨年の音楽小売り売上高は前年比0.9%増と、小幅な伸びにとどまっていた。また昨年上期における売上高はその1年前から0.5%減少していた。

これに対し、今年上期の8.1%という伸び率は、音楽CDが全盛期だった1990年代後半以降で最大。RIAAによると、音楽ストリーミングサービスが急成長していることが、その要因だという。

例えば、今年上期における音楽小売り販売の形態別売上高を見ると、米アップルの「iTunes Store」に代表されるダウンロード販売は10億ドルで、1年前から17%減少。また音楽CDなどの物理メディア販売は6億7200万ドルで、同14%減少した。

これに対し、ストリーミングサービスは16億ドルとなり、同57%増加した。

ストリーミングのシェアがさらに拡大

これに伴い、音楽小売りの形態別売上高比率(シェア)にも変化が生じている。

2016年上期の米国音楽録音物収入シェア(出典:RIAA)
2016年上期の米国音楽録音物収入シェア(出典:RIAA)

例えば今年上期は、ストリーミングのシェアが47%、ダウンロードが31%、物理メディアが20%、シンクロナイゼーション・ロイヤリティー(テレビ、CM、映画などからの楽曲使用料)が3%。

これらの1年前のシェアは、ダウンロード(40%)、ストリーミング(32%)、物理メディア(24%)、シンクロナイゼーション(3%)の順。

ストリーミングのシェアは昨年1年間の統計で34.3%と、ダウンロードの34.0%をわずかに上回る程度だったが、ここに来て一気にその差を広げている。

「Apple Music」や「Spotify」などが急成長

なおRIAAはこのストリーミングサービスを次の3つの形態に分けて分析している。

(1)有料の会員制サービス(Apple Music、TIDAL、Spotifyなど)

(2)インターネットラジオ/衛星ラジオ(Pandora、SiriusXMなど)

(3)無料オンデマンドサービス(YouTube、Vevoなどの動画配信サービスと、広告付き音楽配信サービス)

これら3形態はいずれも売り上げを伸ばしたが、とりわけ(1)の伸びが顕著だ。

その金額は1年前から約2.1倍の10億1000万ドル(約1020億円)となり、半年間の売上高として初めて10億ドルの大台を突破した。この10億ドルという金額は、ダウンロード販売の売り上げと同水準であり、米国音楽小売り販売全体の30%を占める。

RIAAによると、「Apple Music」や「Spotify」に代表される有料会員制ストリーミングサービスは、ダウンロードと物理メディア販売の落ち込み分を補う以上に成長している。その会員数も急増中で、今年上期は、1年前の910万人から1830万人へと2倍に拡大した。

JBpress:2016年9月23日号に掲載/原題「ストリーミングサービスが音楽産業を救う? 米国の音楽販売、CD全盛期以降最大の成長率で回復」)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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