Yahoo!ニュース

Amazonの「フルフィルメント」が急激な伸び、保管から発送、代金回収まで

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

米アマゾン・ドットコムは先頃、昨年末における販売データを一部公表し、2016年は過去最高のホリデーシーズン(年末商戦)になったと報告していたが、同社がこのほど新たに公表した別のデータによると、2016年は年末商戦以外にも大きな躍進があったようだ。

昨年の商品取り扱い量、一昨年の2倍に

1月4日に同社が公表した資料を見ると、アマゾンが外部の小売業者に代わって商品の保管と配送業務などを行うサービス「Fulfillment by Amazon(FBA)」は、その取扱量が飛躍的に増えた。

資料によると、このサービスを利用した昨年の全世界商品配送個数は20億個を超え、これまでの記録を塗り替えたという。米シアトルタイムズが報じている、FBAを利用した2015年の商品配送個数は約10億個だった。つまり昨年はその約2倍の取り扱い量を達成したことになる。

このほかアマゾンによると、FBAを利用する外部小売業者の数が昨年1年間で約70%増加している。これら小売業者商品の米国外における配送個数は約80%増えている。

現在、アマゾンのFBAを利用している小売業者は世界130カ国以上におり、それら業者の商品は世界185カ国の顧客に販売されているという。

外部業者の活用で新たな収益源

この話題について報じている米シーネットの記事によると、こうした外部の小売業者は、アマゾンのeコマース事業にとって重要度が増しており、同社は可能な限り多くの業者にFBAを利用してもらいたいと考えという。

というのもこのFBAは、アマゾンと小売業者の双方にとって大きなメリットがあると見られている。その仕組みは次ぎのようなものだ。

外部の小売業者は商品をアマゾンに登録したのち、アマゾンの倉庫に商品を納入することで、それら自社商品を会員制有料プログラム「Amazon Prime」の対象にすることができる。

そして、アマゾンに商品の注文が入ると、同社が業者に代わり梱包と配送、顧客サポートなどを行う。これにより、顧客は急ぎ便や送料無料サービスといったPrime特典を利用して商品を入手でき、返品などの手続きも容易になる。

また外部業者は、アマゾンの一般会員よりも商品購入が多いと言われるPrime会員に向けて、自社商品を売りやすくなる。

一方で、アマゾンは業者から在庫保管手数料と配送代行手数料を受け取っており、自社で仕入れて販売する商品とは別に収益源を確保しているというわけだ

アマゾンによると、在庫保管手数料とは商品のサイズと保管日数に応じた手数料。配送代行手数料は出荷作業や発送重量にかかる手数料とのことだが、海外メディアによると、アマゾンはこれらの料金として販売価格の10〜15%を受け取っている。

これは同社自らが商品を仕入れて販売するよりも高い利益率。これに加えアマゾンは、より低コストで商品数を増やすことができ、外部業者の活用は同社にとってメリットが大きいと言われている。

外部業者の活用、FBA以外の事業にも

なお、アマゾンが今回公表した資料によると、同社はこれ以外の事業でも外部業者を活用して、顧客の取り込みを図っている。

例えば一昨年に米国で開設した、ハンドメイド製品を取り扱う「Handmade at Amazon」は現在、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、英国でもサービスを提供している。

このサービスでは世界各国の職人が、宝飾品、室内装飾、文房具、パーティー用品、家庭用品、家具、絵画や版画などの分野にわたる作品を50万点以上出品している。

また同じく一昨年に米国で始めた家庭向けサービス「Amazon Home Services」は、同国50以上の大都市圏に拡大した。

こちらは、大型家電製品の取り付けや、家具の組み立て、ハウスクリーニング、住宅リフォーム/修繕、水道工事といった様々なサービスをプロに頼むことができるというもので、サービスを頼みたい顧客と専門業者をネット上で結びつけるマーケットプレースとなる。

アマゾンによると、このマーケットプレースで顧客に提供されたサービスの件数は昨年、3倍以上増えたという。

JBpress:2017年1月6日号に掲載)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

小久保重信の最近の記事