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急伸するドローン市場、今年は6800億円規模に

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

米国の市場調査会社、ガートナーがこのほど公表したドローン(小型無人飛行機)の市場に関するリポートによると、昨年(2016年)1年間における民間用ドローンの世界出荷台数は約215万台で、前年に比べ60.3%増加した。これが今年は同39.0%増の約300万台になるという。

市場規模、2020年に100億ドル突破へ

また昨年における民間用ドローンの売上金額は約45億ドル(約5113億円)だった。これが今年は34.3%増の約60億5000万ドル(約6874億円)となり、2020年には、そのほぼ2倍の112億ドル(1兆2725億円)に達すると同社は見ている。

ガートナーによると、民間用ドローンは個人の趣味用や産業用のいずれにおいても国や自治体の規制という障壁があり、これが市場成長を阻害する要因にもなっている。しかし、これまでのところドローン人気は衰えることを知らず、今後世界のドローン市場は急成長すると同社は予測している。

個人用はスマホの撮影ツールとして人気

ただ、その状況は個人用と産業用でそれぞれ異なるようだ。

例えば個人用は、スマートフォンに手頃な価格で追加できる、写真・動画撮影ツール、あるいは自撮りツールといった用途として、今後も引き続き人気が高まると同社は見ている。

これらのドローンは一般的に、飛行距離や飛行時間が短く(5キロメートル、1時間以内)、高度も500メートルまでと制限されている。また機体の重さは2キログラムまでと軽く、価格は5000ドル(約57万円)未満のものが一般的という。

ガートナーが推計する今年の個人用ドローンの出荷台数は281万7300台。これに対し産業用ドローンは17万4100台にとどまる見通し。つまり出荷台数ベースで見ると、産業用ドローンの市場規模は個人用に比べて極めて小さい。

しかしこれを金額(売上高)ベースで見ると今年は産業用が36億8712万ドルとなり、個人用の23億6222万ドルを大きく上回るという。

産業用は一般的に積載能力や飛行時間、安全機能といった点で個人用を大きく上回り、平均販売価格がはるかに高いというのがその理由だ。

監視・検査用ドローン、3年後に全産業の3割に

ガートナーによると、最近は各国政府が規制づくりを進めており、ほぼすべての産業分野で試験や運用が始まっている。これにより、産業用ドローンの市場は安定化し始めているという。

そして、今後急速に伸びるとガートナーが予測しているのは、石油、ガス、エネルギー、インフラ、交通・運輸分野などにおける監視・検査用のドローン。この分野の市場規模は2020年までに全産業用ドローンの30%を占めるまでになると同社は見ている。

前途多難か? アマゾンなどが取り組む配送用ドローン

なお、農業用ドローンは当初大きく伸びると見られていた分野。だがこの市場はコストに敏感であり、投資回収率の低さといった点がここに来て課題になってるという。

このほか、配送用のドローンは米アマゾン・ドットコムなどが試験飛行を始めるなどして何かと話題になっているが、こちらも機体そのもののコストや運用コストなどがかさみ、投資回収率が低い状況にあるという。

こうしたことから、配送用ドローン市場の規模は2020年になっても全産業用ドローンの1%未満にとどまる見通しとガートナーは報告している。

JBpress:2017年2月14日号に掲載)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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