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世界スマホ市場が復調へ、ファブレットが牽引

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

米調査会社のIDCがこのほど公表したスマートフォン市場に関するリポートによると、今年(2017年)の全世界における出荷台数は、15億3480万台となる見通し。成長率は引き続き1桁台の前半にとどまるものの、市場は回復に向かうと予測している。

けん引役は“ファブレット”

スマートフォンの年間出荷台数は、一昨年に前年比10.4%増と、2桁成長したのち、昨年は同2.5%増と、小幅な伸びにとどまった。

これが今年は4.2%、来年は4.4%の伸びで成長すると同社は見ている。また同社が推計する今後5年間の年平均成長率は3.8%。これにより出荷台数は、2021年に17億7410万台に達するという。

ファブレット、今後も高い伸び率で推移する見通し/出典:米IDC
ファブレット、今後も高い伸び率で推移する見通し/出典:米IDC

IDCが市場回復のけん引役と見ているのが、“ファブレット”と呼ばれる、大画面ディスプレーを備える端末だ。

昨年におけるこれら大型端末の前年比伸び率は、市場全体のそれを大きく上回る49%となった。ファブレットは今後5年間、9.2%の年平均成長率で伸び続け、2021年には約6億8000万台に達すると、同社は見ている。

iPhoneは10周年モデルに期待

このほか、IDCが推計する今年のOS(基本ソフト)別出荷台数は、米グーグルの「Android」が13億500万台で、市場シェアは85.0%。

これに米アップルの「iOS」(iPhone)が2億2600万台(シェア14.7%)で次ぐ。また米マイクロソフトの「Windows」はわずか180万台で、シェアは0.1%にとどまる見通し。

このうち、Androidの前年比伸び率は4.6%となり、市場全体のそれを若干上回るという。Androidについては引き続き、「中東およびアフリカ(MEA)」「中・東欧(CEE)」「日本を除くアジア太平洋地域(APeJ)」といった市場が、成長を後押しするという。

iOSの前年比伸び率は4.9%となる見通し。iPhoneの年間出荷台数は昨年、7.0%減となり、初めて前年実績を下回った。だが今年は発売10周年モデルが登場するとの観測が出ている。これに伴い、「機能などの大幅刷新や、大々的なプロモーションが予想され、iPhoneは堅調に回復するだろう」とIDCは報告している。

Windowsは大幅な落ち込み

一方でWindowsは前年比69.5%減と、大幅に落ち込む見通し。多くのメーカーが同OS搭載スマートフォンの製造を中断していることが、その理由という。

今後マイクロソフトがメーカーに対し、Windowsの採用を働きかけていくのか、あるいは自社開発の端末を市場投入するのか、現時点では不透明。現状では、Windowsスマートフォン回復の明確な道筋は見えないと、IDCは指摘している。

JBpress:2017年3月3日号に掲載)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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