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バロンドールは誰の手に?メッシ・ロナウド時代に終止符を打つのは・・・。

小宮良之スポーツライター・小説家
アトレティコでプレーするグリーズマン(写真:ロイター/アフロ)

「メッシ・ロナウド時代は終わるのか?」

それが今回の「バロンドール」の見所だろう。もし終わるなら、新たな「王」となるのは誰なのか?

新たな王は誕生するか?

10月24日、2016年のバロンドール(世界最優秀選手賞)最終候補30名が発表された。フランスのサッカー専門誌「フランス・フットボール」が1956年から主催。世界で最も権威のあるサッカー賞の一つで、2010年からFIFAと提携して「FIFAバロンドール」となっていた。今年は契約満了でバロンドールに戻し、各国代表監督と主将の投票がなくなり、ジャーナリストによる投票という旧来の形式となった。

バロンドールは2008年からリオネル・メッシとクリスティアーノ・ロナウドが独占。メッシが5度、ロナウドが3度。

「メッシ・ロナウド時代」と語られるサッカー界だが、バロンドールはその象徴となった。今回の30名のリストにも、当然ながら二人の名前は載っている。

スペインの大手スポーツ紙「マルカ」は発表当日、「誰が受賞にふさわしいか?」というインターネット調査を行い、6割近い人がメッシに投票した。2位には3割近い得票でロナウド。差は付いたが、特筆すべきは、9割近い人が二人に票を入れていることだろう。

メッシは異次元の世界を見せ続けている。先日のマンチェスター・シティ戦後、ジョゼップ・グアルディオラは「ただ祝福するしかない」と脱帽し、ルイス・エンリケは「メッシを疑う者は無知」と言い切った。現代を生きる我々は、メッシを見られた幸福を噛みしめるべきだろう。

「シーズン50得点(すべての大会を合計して)なんてとんでもない記録だよ。僕なんて、20得点するのも苦労したからね」

ラウール・ゴンサレスはロナウドの怪物ぶりを語る。記録という意味で言えば、ロナウドを超える選手はいない。さらに勝利の執着のすさまじさは、世界が知るところだろう。

二人は、サッカーを進化させた革命家だ。

しかし、時代が新たに動きそうな気配はある。

グリーズマンという新星

バロンドール候補30名が発表された同日、スペイン、リーガエスパニョーラは2015-16シーズンの最優秀選手として、アトレティコ・マドリーのアントワーヌ・グリーズマンを選出している。メッシでも、ロナウドでもなく。グリーズマンのプレーにはそれだけの新しい息吹が感じられる。

フランス代表のグリーズマンは、得点の経路が見える選手である。どのポイントにボールを呼び込み、弾くのか、を心得ており、プレーを創り出せる。ファーポストでDFの背後に回ってゴールを打ち込む感覚は天才的。スピードがクローズアップされるが、テンポを使うのが上手く、左利き特有の"ズレ"がスペクタクルを生むのは、メッシと共通する点だろう。

グリーズマンはフランス、ブルゴーニュ地域のマコンに生まれている。マコンは人口3万5000人ほどの小さな町。彼は幼少期、地元の UFマコネーという無名クラブに所属していた。

「幼い頃のグリーズマンは、パウロ・フットレを思い出させる選手だった。小さくて、すばしっこくて、ボールを持ったら突っ込んでいく。ドリブラーと言っていいだろうね」。地元クラブの関係者は振り返っている。

しかし当時は背が低く細身で、プロクラブの下部組織入団のテストには片っ端から落ちていた。

「10クラブで落第したよ。『悪くないけど、ちっちゃいから』なんて言われて。いつも同じ理由でうんざりだった」と本人が告白しているように、雑草の部類に入る選手だろう。

13歳のとき、スペインのレアル・ソシエダのスカウトに才能を見込まれている(サンテティエンヌのトライアル生としてパリの大会に出場していた)。実家を離れて寮で暮らすことになった彼は、強烈なホームシックにかかった。言葉の問題もあり、異国での生活に慣れなかった。

しかしやがて、格段に成長を見せた。ピッチに入ると、物怖じしなかった。戦いの経験を積み重ね、センスを研ぎ澄ませた。

<宇宙がある>

そう表現される選手で、ボールプレーヤーとしての才能は破格と言える。誰よりもボールを操る術に武、スペースとタイミングを心得る。

グリーズマンは自国開催のEUROでも決勝に進出。優勝には手が届かなかったが、投票のポイントになるだろう。もっとも、本人は"敗北宣言"をしている。

「バロンドールはロナウドだよ。なんといってもダブルだからね」

EURO決勝ではポルトガルの前に涙を呑み、チャンピオンズリーグ決勝でもレアル・マドリーに敗れた。ロナウドが絶叫する姿を、目の前で見ることになった。

たしかにタイトルということを大きく加味するなら、ロナウドになる可能性は高いだろう。しかしロナウドは昨シーズン終盤から故障が目立ち、コンディションの悪さは明らか、今シーズンのプレーも精彩を欠く。また、現時点で世界最高のプレーヤーはメッシと言えるが、CLやコパ・アメリカの成績を参考にした場合、はたして今年の受賞はふさわしいのだろうか?

一方、グリーズマンは新しい扉を開けようとしている。もし筆者が投票するなら――。1位グリーズマン、2位ぺぺ(レアル・マドリー/ポルトガル)、3位ルイ・パトリシオ(スポルティング・リスボン/ポルトガル)となるだろう。メッシ、ロナウドは2,3位に入ってくるべきだが、彼らには1位以外は似合わない。ぺぺ、パトリシオは守備の芸術を見せた。

バロンドールの発表は12月。はたして、メッシ・ロナウド時代は続くのか?

スポーツライター・小説家

1972年、横浜生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。競技者と心を通わすインタビューに定評がある。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)『アンチ・ドロップアウト』(集英社)。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。他にTBS『情熱大陸』テレビ東京『フットブレイン』TOKYO FM『Athelete Beat』『クロノス』NHK『スポーツ大陸』『サンデースポーツ』で特集企画、出演。「JFA100周年感謝表彰」を受賞。

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