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本塁打で及ばない阪神が巨人をまくった生還率15%差の下克上

小中翔太スポーツライター/算数好きの野球少年

例年以上に際立つ本塁打の威力

今季のCSはセパ共にホームランの威力がいかに大きいかを改めて思い知らされる展開となった。

セリーグの阪神と広島のファーストステージでは、両軍計40回の攻撃で入った得点はわずかに1点のみ。それもタイムリーではなく福留のソロ本塁打によるものだった。パリーグでも初戦をエース・金子で落とし追い詰められたオリックスが、第2戦では1点を追う8回にT-岡田のスリーランで逆転勝利。運命の第3戦では駿太の先頭打者ホームランで先制するも最後は、日本ハム・中田の一振りの前に屈した。中田の勢いはファイナルステージでも衰えずCS史上初の4戦連続アーチ、第3戦では不振だった陽の2打席連続本塁打もあって12得点の大勝を呼び込んだ。

短期決戦における本塁打の重みはペナントレース以上のものがある。

阪神と巨人によるCS初となる伝統の一戦の舞台は、本塁打の出やすい東京ドーム。ペナントレース全体を通してのチーム本塁打数は巨人が144本、阪神が94本と50本の差がある。東京ドームでの試合では巨人は63試合で72本塁打。阪神は12試合で12本塁打と1試合に1本は期待出来る数字を残しているが、やはり巨人には及ばない。ファイナルステージでも放った本塁打数は巨人が6本で阪神が阪神が4本。ただしほとんどがソロ本塁打だった巨人に比べ阪神は効果的な一発が目立った。打点王・ゴメスのツーランが効き初戦を取ると3連勝で一気に王手。第4戦でも初回にマートンのスリーランと福留のソロで4点を先制すると、2回にも西岡のツーランで加点。本塁打の”数より質”で9年ぶりの日本シリーズ進出を決めたが、阪神がチーム本塁打数で巨人を上回ったのは1990年が最後。それから24年、約四半世紀の長きに渡って後塵を拝し続けている。

5回に1回ぐらいしか生還しなかった巨人と、3回に1回以上生還した阪神

実はもう1つ、本塁打以外に阪神が長年巨人に及ばない数字がある。安打や四死球で出塁したランナーが得点する割合、生還率である。今季の巨人は安打+四死球が1721で596得点、生還率は34.63%。阪神は安打+四死球が1802で599得点、生還率は33.24%となる。さらに同様の計算を続けたところ、阪神が巨人を上回るのは2005年まで遡らなければならない。この年の生還率は阪神が37.06%で巨人が35.02%だった。24年もチーム本塁打数で差をつけられているため生還率でも分が悪いのは当たり前だか、2005年のチーム本塁打数は阪神が140本で巨人が186本。現在は解説者として人気の高い金本、赤星、今岡、矢野、下柳らが中心選手だった頃には、46発差があっても生還率で2%上回っていた。

しかし、阪神は優勝したこの年を最後に生還率で巨人を上回ることが無い。今季のように拮抗した年もあったが5%近くの大差をつけられた年が複数ある。近年10年の生還率は巨人が35.15%で阪神が32.7%。その差、2.45%。数字に直せば非常に小さく感じられる値だが、出塁したランナーが3回に1回以上生還する巨人と、3回に1回以下しか生還しない阪神という構図が浮かび上がる。

しかし、ファイナルステージの生還率は巨人が20.45%で阪神が35.59%。わずか4試合という非常に短いスパンではあるが、5回に1回ぐらいしか生還しない巨人と、3回に1回以上生還する阪神と完全に立場を逆転させた。阪神の生還率の上昇は単なる偶然か。その真価が問われるのは日本シリーズという最高の舞台。もう勝負弱いとは言わせない!

スポーツライター/算数好きの野球少年

1988年1月19日大阪府生まれ、京都府宮津市育ち。大学野球連盟の学生委員や独立リーグのインターン、女子プロ野球の記録員を経験。野球専門誌「Baseball Times」にて阪神タイガースを担当し、スポーツナビや高校野球ドットコムにも寄稿する。セイバーメトリクスに興味津々。

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