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巨人に隙無し、阪神は守備に問題あり・・・セリーグの戦いを振り返る

小中翔太スポーツライター/算数好きの野球少年

ヤクルトとオリックスの補強が目立った今季のストーブリーグ。各球団とも仕事納めを迎え、一部未定の選手もいるが来季の戦力はほぼ確定した。開幕は待ち遠しいが、基準になるのは今季の成績。セリーグ各球団の成績を打撃力はOPS(出塁率+長打率)、投手力はFIP(野手の守備力の影響を受けない奪三振、与四球、被本塁打のみから算出した指標)、守備力はDER(フェアゾーンに飛んだ打球をアウトにした割合)、走力は内野安打+盗塁をそれぞれリーグ平均と比べ優劣をABCの3段階で評価した。

巨人・・・層の厚さは健在

打 B

投 A

守 A

走 A

規定打席到達で打率3割の打者はおらずチーム最多打点は村田の68と迫力に欠ける、今季はこう表現されることが多い打線だがOPSはリーグ3位をキープ。主力打者が不調でも層の厚さを見せつけた。坂本、鈴木、橋本の盗塁成功率は80%台で片岡も77.4%と2桁盗塁を記録した4人全員が高い数値をマーク。投手陣も東京ドームを本拠地にしながら被本塁打を平均以下に抑え与四球はリーグ最少で552失点はリーグ1位。チーム全体の守備範囲を表すDERもリーグ2位を記録し、これといった弱点は見当たらない。

阪神・・・守備力に問題あり

打 B

投 A

守 C

走 C

盗塁数、成功率共にリーグ最低で内野安打も多くないが、走るチームカラーではないため想定内と言えるだろう。それより気になるのは、セリーグで唯一FIPより防御率が大きく、しかも0.45と大きな開きがあること。これはFIP3.43を記録した投手陣は非常に優秀だったが、DERがワースト2位の守備陣が足を引っ張り失点を大幅に増やしてしまったためと考えられる。例えば個人で見ると、堅実な守備で長年チームを支えた鳥谷も補殺数は例年より100少なく、今季に関しては守備範囲が広いとは言えない。ちなみに昨季はDERが12球団トップで、失点を400点台に抑えたのは阪神だけだった。しかし今季はFIPは良くなっているのに失点が126点も増えている。鳥谷の去就とそれに伴い大和のコンバートが話題となっているが、甲子園を本拠地にするチームにとってセンターラインの守備力は死活問題だ。

広島・・・優れた攻撃陣と平均的な投手、守備陣

打 A

投 B

守 B

走 A

順位は3位ながら隙らしい隙は無い。優れているのは攻撃面、649得点はリーグ2位でOPS.757はリーグ1位。盗塁成功率は目安となる70%を割り込んでいるが、盗塁数と盗塁死を合わせた盗塁企図数150はリーグ1位。走る意識は高く、伝統の機動力野球は受け継がれている。投手力を表すFIP、チーム全体の守備範囲を表すDER共にほぼリーグ平均と同じで、大きくアドバンテージを作ることは出来なかったが、マイナスになることもなかった。もし、一岡がシーズン通して投げていれば赤ヘル旋風が現実のものとなっていたかもしれない。

中日・・・堅い守備とベテラン頼み

打 C

投 B

守 A

走 B

鉄壁の守備力が光り、DERはセリーグ唯一の69%台で断トツトップ。阪神とは逆にFIPより防御率の方が0.30も数字が小さい。これはイメージ的には野手の守備力が1試合当たり失点を0.3点防いだということ。守備では貢献した野手陣だが、打撃では本塁打87はリーグ最少、OPS.689もリーグワーストと迫力に欠ける。ルナ、和田、森野、平田は2桁本塁打を放っているがその後を打つ7番8番となるとOPSがガクッと下がり.596と.521となる。高橋周平ら長打力のある若手もいるがベテランの壁を超えられずレギュラー奪取とはならなかった。堅い守備とベテラン頼みという点では中日らしいシーズンだったと言えるだろう。

DeNA・・・どれもが平均に少し及ばない

打 C

投 C

守 B

走 B

先発として復活した山口、キューバの至宝・グリエルら個人で光る一面もあったがチーム全体としてはOPS.700、FIP4.11など「平均以下」の数字が並ぶ。昨季の打線は630得点を挙げリーグ最強の攻撃力を誇っていたが今季の568得点はリーグ最少。しかも本塁打は中日より34本多いにもかかわらず得点では下回る。OPSは.800以上が強打者の目安だが、規定打席到達者でこれを超えているのは筒香のみ。逆に昨季は壊滅状態だった投手陣だが、今季はQS率(先発投手が6回以上を投げ自責点を3点以下に抑えた割合)が41.7%から52.8%に、またQS時の勝率も.600から.693へと大幅に改善。他球団とのバランスを見て相対的に投手力をCとしたが内容はBに近く、打撃力と守備力もCとBの中間ぐらい。どれも平均に少し及ばないものの、プラスαがあれば化ける可能性を秘めている。

ヤクルト・・・攻撃は最大の防御

打 A

投 C

守 C

走 B

攻撃は最大の防御、を見事なまでに表すシーズンとなった。667得点、717失点は共に12球団最多。大ブレイクした山田が主に務めた1番は打順別OPSで驚異の.915を記録した。攻撃的2番として開幕を迎えた雄平がそのままハマっていればプロ野球史上でも屈指の上位打線となっていただろう。攻撃面は文句なしだが、守備面となるとFIP、DER共にリーグ最低。被本塁打は試合数を上回る161本を許し、選手起用を見てもショート、センターと守備の中心となる選手を固定出来なかったことがわかる。館山、ミレッジらが万全なら台風の目となって混セを演出していたかもしれない。

スポーツライター/算数好きの野球少年

1988年1月19日大阪府生まれ、京都府宮津市育ち。大学野球連盟の学生委員や独立リーグのインターン、女子プロ野球の記録員を経験。野球専門誌「Baseball Times」にて阪神タイガースを担当し、スポーツナビや高校野球ドットコムにも寄稿する。セイバーメトリクスに興味津々。

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