「Kindle Fire HDX 7」のポジティブ過ぎる"言い訳"が気になる。
Amazonが発売するタブレット端末「Kindle Fire HDX 7」は、製品販売ページで、ディスプレイに関する「確認」を呼びかけている。
製品の是非はともかく、その文章を読むと、筆者は気になって眠れないほどの違和感を覚えるのである。
技術背景を整理しつつ、問題の本質を考えてみた。
まずは本家の原文を読んでみよう
Amazonの「Kindle Fire HDX 7」販売ページでは、「ディスプレイの仕様」として、以下の確認を呼びかけている。
筆者は大きな違和感を感じると共に、ネット上でも「何かヘンだ」と言う声がチラホラ。
製品の詳細や、「青い線」の見え方については、以下の記事で紹介されているので、参考にして頂きたい。
PC Watch 山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ Amazon「Kindle Fire HDX 7」
現象の根本は何か? 技術的な観点で把握しよう
筆者が手元の実機を確認したところ、画面下辺部から中央に向かって、僅かに青いグラデーションが被ったように見える。しかし、背景が白色の場合で、言われてみないと分からない程度である。
一方、ネット上で指摘しているユーザー達の投稿写真やレビュー記事を見ると、バッチリ青いグラデーションが見えてしまっているものもある。個体差があるのかもしれない。
いずれにせよ、Amazonが製品販売ページで注意を促している訳なので、購入を検討している消費者は注意すべきだ。
現象について詳しく見ていこう。そもそも液晶ディスプレイの映像は、液晶パネルでつくった映像を、背面からバックライトと呼ばれる光源で照らし出す仕組みになっている。ステンドグラスを思い浮かべると良いだろう。薄型のタブレット端末では、光源となるLEDを画面サイド付近に配置し、光を拡散させて画面全体を光らせている。よって、画面の輝度ムラもゼロには出来ないし、特に、設計上は、サイドに配置したLEDの光漏れに注意が必要だ。これは、原文の「端に光の放射が発生」という表現に相当する。
一般的なタブレット端末は白色LEDを用いているため、光漏れがあっても気が付きにくい。白色は全ての色を含むため、色が薄くなる程度で、色味の変化は起こらないからだ。(因みに白色LEDは、青色LEDに黄色の発光体を組み合わせたもので、色の再現性には限界がある。)
一方、「Kindle Fire HDX 7」は、Nanosys社と3M社が協同開発した「QDEF」という最新の量子ドット技術を導入している。青色LEDを用い、光の波長変換を行う事で赤色や緑色を得る仕組みで、ピュアで深い色再現と省電力を両立できる画期的な新技術だ。
問題は、光源である青色LEDの光が漏れると、画面の色味に変化を及ぼす点である。白色LEDを用いる場合よりも、「光漏れ」に注意した設計が必要なのだ。
「嘘」ではないけれど、ポジティブ過ぎでしょ!
Amazonの解説に「嘘」は無い。しかし何かが引っ掛かる。
それは、色再現能力と低消費電力性能の向上を引き合いに出し、「青い線」現象をポジティブに感じさせようとする意図が見え隠れするからだ。
Amazonの説明文や技術背景から推測すると、現象の本質は、青色LEDの光漏れを防げなかった点にありそうだ。白色LEDを使用するのと同じ感覚で設計してしまったのではないだろうか? 因みに、同様の技術を採用しているとされるKindle Fire HDX 8.9」では、そのような現象や記述は見あたらない。
繰り返すが、筆者は製品に欠陥があると指摘しているのでは無い。購入ページに「青い線」現象が明記されており、購入の判断は消費者に委ねられいるからだ。問題と感じるかどうかは用途や個人差にもよる。
筆者が気になるのは、あくまでも、”ポジティブ過ぎる”解説文だ。
”ポジティブ過ぎ"な表現になった理由?
USのAmazon.comの英文を確認すると、ほぼ同様の内容が記されている。日本語解説は、元の英文を直訳したのだろう。技術背景を理解しつつ、日本の消費者の”受け取り方”(心情)を考慮すれば、もっと素直な表現になっていただろうと思うし、消費者に違和感も生じなかっただろう。
最後に、Amazonにとって「青い線」現象は、あくまでも"現象"なのである。あなたは、どう思うだろうか?