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もしも「W杯」が4Kで放送されたなら?

鴻池賢三オーディオ・ビジュアル&家電評論家
業界初でシャープが発表した4K衛星チューナーによる受信デモ(筆者撮影)

現在のハイビジョンデジタル放送(HDTV)に対し、約4倍の高精細な「4K」や、16倍の「8K」に向かい、急ピッチで開発が進められている。

これは、日本のエレクトロニクス産業強化を目的とした国策でもあり、ここ最近は予定の前倒しも続いている。

第一関門の4Kテレビ普及に際しては、豊富な4Kコンテンツの登場、つまり、放送の4K化が欠かせない。6月2日からは、NextTV-Fが「Channel 4K」の名称で、CS(衛星)を利用した全国的な試験放送を開始する予定で、それを受信するチューナーも、シャープが業界で初めて6月25日に発売すると発表し、話題を集めている。

現時点で試験放送の内容は、環境映像のような録画コンテンツを1日に数時間繰り返し放映する見込みだが、5月20日に新藤総務大臣が「W杯の放送に向けて関係者が調整中」と言及したことから、「W杯」の4K中継も、可能性が見えて来た。

確定事項ではないが、一旦は放映権の絡みで白紙に戻されたという「W杯」の4K中継だけに、関係者やサッカーファンの期待が高まっている。

もし「W杯」が4Kで放送されたなら、何が起こるのだろうか?

4K放送なら「W杯」はどう見える?

現在のハイビジョンデジタル放送(HDTV)が200万画素相当なの対し、「4K」は800万画素相当。当然、画素の多いデジタルカメラで撮影したかのように、遠めで小さく映る選手の表情や芝の様子までクッキリ見える可能性が高い。

しかし、それだけでは無い。4K試験放送は、1秒間を60コマの映像で構成する「60p」で放送され、現在のデジタル放送よりも高品位なのだ。技術的な詳細は割愛するが、サッカーなら選手やボールの動きがより滑らかでリアルに、そしてより細部までクッキリ映し出せる能力がある。例えるなら、パラパラマンガの一枚一枚がキレイな画で、それが超高速にパラパラするイメージだ。

シャープが業界初で発表した4Kチューナによる、4K試験放送の受信デモンストレーションを体験したが、単に映像がキレイと言うだけでなく、その場の空気感や温度感までも伝える力を感じた。「W杯」なら、会場の熱気も感じられるのではないだろうか?

どこで見られる「4K」試験放送

シャープが6月25日に発売を予定している「TU-UD1000」は、4K試験放送が受信可能な124/128度CSチューナーと録画用HDDを内蔵している。124/128度CS放送対応のパラボラアンテナを設置し、「スカパー!プレミアム」など必要な手続きを行い、「TU-UD1000」と「TU-UD1000」からの4K映像を受け取れる4Kテレビをセットすれば、自宅で4K品質の放送映像を見る事ができる。

「だけど~、ボクには予算が無い~」、など、費用や手間が面倒な方は、家電店に行くと良いだろう。大手量販店なら、客寄せとして、店頭で受信デモンストレーションを行うはずだ。

尚、現時点では試験放送で「W杯」が見られる確約は無いので、念のため。

4K試験放送で「W杯」中継が経済へ及ぼす影響は?

2014年は4Kテレビの普及期とする報道も多いが、これは機器の機能充実やコストパフォマンス向上を根拠とした意見である。アーリアダプターやマニアが飛び付くには充分だが、一般ユーザーにとっては、未だ、4Kのメリットが見いだせない段階だろう。

しかし、キラーコンテンツとも言える「W杯」が4K中継されるとなれば、チューナーは直ぐに売り切れてしまうほど注目を集める可能性がある。そして、多くの人々が、4Kの高画質を体感すれば、4Kへの意識も大きく変わる可能性を秘めている。

筆者の私見だが、サッカーを4K/60pで見る意義は大きい。誰もが、現在のデジタル放送との違いを実感できると考えている。

「W杯」中継の実現は、エレクトロニクス業界の思惑を背負った期待でもあるが、真に、業界そして日本経済にもプラスなるだろう。

「W杯」の4K中継は、確率95%!

筆者の予測に過ぎないが、業界の4Kへの期待、過去の経緯、対応機器の発表、総務大臣の発言などを勘案すると、「大きな力」で、「W杯」の4K中継実現は極めて高そうだ。放送される試合数や、日本戦が含まれるかどうかなども気になるが、後は発表を待つのみである。

4Kに懐疑的な方も、「W杯」の中継が実現した際には、是非ご自身の目で、画質とそれによる感動レベルの違いを体感していただきたい。

「W杯」を8Kで観よう

放送とは無関係だが、NHKでは全国4箇所で、「W杯」の8Kパブリックビューイングを予定している。6月15日、17日、20日限定で応募も必要だが、放送の未来を感じる良い機会となるだろう。

オーディオ・ビジュアル&家電評論家

AV機器メーカーで商品企画職を務めた後、米シリコンバレーのマルチメディア向け半導体ベンチャー企業を経て独立。オーディオ・ビジュアル評論家として専門誌などで執筆活動を行うほか、エレクトロニクス 技術トレンドに精通し生活家電を含むホームエレクトロニクス、ネットワーク家電、スマート家電の評価、製品の選び方、賢い使い方、および未来予想をメディアを通じて発信中。NHKほかテレビ出演も多数。ビジュアルグランプリ(VGP)審査副委員長/米ISF認証ビデオエンジニア/米THX認証ホームシアターデザイナー/一般財団法人家電製品協会認定家電製品総合アドバイザー/甲種防火管理者

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