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GWのガソリン価格は、去年より1リットル当り11.6円高い

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

資源エネルギー庁が4月30日に発表した石油製品価格調査によると、4月28日時点でのレギュラーガソリン店頭小売価格(全国平均)は1リットル当りで前週比+0.6円の164.8円となった。

4月は164.2円での横ばい状態が続いていたが、3週間ぶりに値上がりし、2008年9月29日の週以来の高値を更新している。値上がりは愛知の+2.3円の165.5円、値下がりは京都の-0.3円の166.0円がそれぞれ最大になっている。前年同期の153.2円からは11.6円の値上がりとなる。

■原油調達コストの転嫁は遅れがち

ドル建ての中東産原油価格は前週の1バレル=105.85ドルから106.25ドルまで上昇し、東京商品取引所(TOCOM)の原油先物相場(当限)も前週の1キロリットル=6万7,660円から6万7,730円まで小幅続伸している。

ウクライナ情勢が再び緊迫化する中、原油価格には僅かながら地政学的リスクのプレミアムが加算されている結果である。欧米諸国が対ロシア制裁の動きを強める中、ロシア産原油供給を巡って何らかの混乱が生じるリスクが警戒されている。

ただ従来とは違って、供給「リスク」のみで大きく買い進むような動きもみられず、総じて上げ幅は限定されている。ロシア産原油を巡る混乱は、ロシアにとっても欧州にとっても余りにリスクが大きく、最終的には原油供給環境に大きな混乱は生じないとの楽観的な見方が、原油価格の上げ幅を限定している。

ドル/円相場がほぼ横ばいで推移する中、原油調達コストの上昇分をガソリン価格に転嫁する動きが優勢になったが、全般的に特に目立った動きは見られない。

消費増税後は末端販売の不振状態が続いており、コスト高を転嫁することに対しては慎重姿勢も見受けられる。ただ、ゴールデン・ウィークの行楽需要を見込んで、今週は素直に価格転嫁の動きが強くなった模様だ。

■ガソリン価格は高値横ばいか

今後もウクライナ情勢が原油価格の下落余地を限定することが予測され、ガソリン価格の大幅な値下がりは想定しづらい。仮にロシア軍のウクライナ介入と言った動きが見られると、一時的に原油価格主導でガソリン価格が吹き上げる可能性も否定できない。

ただ、ここにきて米国内の原油在庫が過去最高を更新するなど、需要の端境期を理由とした需給緩和圧力がクローズアップされる中、原油価格は高止まりがメインシナリオになる。米国の指標油種であるWTI原油価格は逆に下落リスクの方が高く、原油価格主導でガソリン価格が急伸するようなリスクも限定されよう。

地政学的リスクと需給緩和という強弱材料に挟まれる中、原油価格の大きな値動きは限定され易い。ガソリン小売価格は、現在の160円台中盤での取引を想定しておけば良いと考えている。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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