Yahoo!ニュース

NY金6日:続伸、米貿易収支で世界経済の減速懸念

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト
(写真:アフロ)

COMEX金12月限 前日比8.80ドル高

始値 1,134.70ドル

高値 1,151.00ドル

安値 1,134.50ドル

終値 1,146.40ドル

8月米貿易収支で世界経済の減速懸念が一段と強まる中、続伸した。

アジア・欧州タイムは1,130ドル台中盤から後半での取引になったが、8月米貿易収支の発表を受けてまとまった買いが入り、一時は1,150ドル台も回復する動きを見せた。8月貿易収支は、輸出が前月比-2.0%の1,851億ドル、輸入が+1.2%の2,334億ドルとなっている。輸出の大幅な落ち込みから、米国外経済の減速イメージが強くなったことが、金価格をサポートした模様。

一般的に、貿易収支は他指標から1~2ヶ月遅れで発表されるため、マーケットでは貿易赤字や経常赤字などが深刻化している局面以外では余り材料視されない傾向が強い。今回発表されたのも8月の統計であり、2ヶ月前の輸出統計に一喜一憂する必要性は乏しい。ただ、世界経済の減速懸念が強まり、更にそれが米成長鈍化、利上げ先送りにつながる可能性が警戒されている現在の地合においては、「輸出減速→海外経済鈍化→米成長鈍化→利上げ先送り」の思惑が金価格を刺激している。雇用統計がネガティブ・サプライズとなった余波も僅かながら残る中、景気見通しに対するネガティブな統計は、必要以上に相場に影響を及ぼす傾向が見受けられる。

なお年内利上げ着手が完全に否定された訳ではなく、米連邦準備制度理事会(FRB)が追加緩和を迫られるような状況にもない。ただ、金融正常化プロセスが足踏み状態を迫られる中、金相場のダウントレンドも足踏み状態になる。改めて売り込むには、良好な指標か当局者からのタカ派発言が要求される状況に変化はない。改めて金相場を買い上げるような状況にはなく戻り余地は大きくないと考えているが、金相場の値下がり傾向は仕切り直しを迫られる。まずは10月8日の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録で動きが出てくるのかが焦点になるが、ネガティブサプライズとなった雇用統計発表前の議論とあって、手掛かり視されづらい。

画像
マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

小菅努の最近の記事