OPEC減産合意でも、原油50ドル割れの衝撃
国際原油相場が軟化している。9月28日に石油輸出国機構(OPEC)が実質的な減産で合意したことを受けて、1バレル=45~47ドル水準から10月19日には52.22ドルまで上値を切り上げていたのが、10月25日の取引ではついに50ドルの節目を完全に下抜く展開となり、本稿執筆時点では49ドル台前半まで値位置を切り下げている。終値ベースでの50ドル台割れは10月4日以来となるちょうど3週間ぶりのことであり、OPEC主導の原油価格急伸局面が一服したことが確認できる。
【NYMEX原油先物価格(日足)】
(画像出所:CME)
背景にあるのは、「やはりOPECが原油供給をコントロールするのは難しいのではないだろうか?」との疑心暗鬼である。OPECは9月28日にOPEC全体の産油量を日量3,250万~3,300万バレルまで抑制することで合意した。OPECは「減産」ではなく「生産ターゲット」と解説しているが、その当時の最新データとしては8月時点として3,324万バレルの産油量が報告されていたため、実質的には「減産合意」と評価されており、メディア等でもそのように報じられている。
ただ、そこで合意されたのはあくまでもOPEC全体としての減産の方向性であり、具体的にOPECの各加盟国が産油量をどのように修正するのかは、議論が先送りされた状態になっていた。11月30日のOPEC定例総会に向けて最終合意を目指す流れにあったが、ここにきてOPEC内での不協和音が目立ち始めていることが、上述のようにOPECの供給管理実現に懐疑的な見方を広げている訳だ。
直接のきかっけになったのは、イラクのルアイビ石油相が10月23日、イラクを減産割り当ての対象国から外すべきと訴えたことだった。既にイラン、ナイジェリア、リビアが減産割り当ての対象にしないことを求めているが、これらの国々は地政学的要因から既に不可抗力の減産を迫られているものであり、追加の減産を拒否することには一定の合理性があった。しかし、イラクについては「イスラム国」への対応への資金需要を理由に掲げており、要するに財政逼迫を理由に減産を拒否した形になる。
このような主張が認められるのであれば、OPECの他加盟国も減産を拒否することが正当化できることになり、マーケットがOPECの生産調整に懐疑的な見方を強めたのは合理的とも言える。
OPECのバルキンド事務局長は現状を「最も困難な時期」と評価しているが、OPECが本当に原油供給をコントロールすることで原油需給と価格の安定化を実現するのか、改めてその手腕が問われる局面になっている。10月29日にはロシア、カナダ、メキシコ、ノルウェー、オマーンなども招待したOPECのハイレベル協議が予定されているが、ここにきての原油相場急落は、OPECに明確かつ早急な減産フレームの構築を迫る動きと評価できそうだ。