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9月末の日本国債の保有者

久保田博幸金融アナリスト

12月18日に日銀は2014年7~9月期の資金循環統計を発表した。この資金循環統計を基に、2014年9月末時点の国債保有者別の残高と全体に占める割合を算出してみた。ただし、これは国庫短期証券を含んだものではなく、国債・財融債のみの数値を個別に自分で集計し直したものである。一般的に国債の保有者の割合としては、こちらの数値が使われることが多い。

9月末の国債(国債・財融債のみ、国庫短期証券を除く)の残高は、860兆6779億円(6月末852兆4316億円)と前回の6月末から8兆2463億円増加した(速報ベース)。国庫短期証券を加えると国債の残高は約1015兆円となる。

参考までに日銀の資金循環統計の数値は額面ベースではなく「時価ベース」となっている点に注意いただきたい(財務省の国債残高などは額面ベースが多い)。以下、投資家別に残高の多いものから並べてみた

銀行など民間預金取扱機関 282兆1407億円(6月末285兆8224億円)、32.8%(同33.5%)

民間の保険・年金 230兆4700億円(同228兆2342億円)、26.8%(同26.8%)

日本銀行 183兆4282億円(同169兆8223億円)、21.3%(同19.9%)

公的年金 62兆0554億円(同65兆1899億円)、7.2%(同7.6%)

海外 41兆0746億円(同35兆1977億円)、4.8%(同4.1%)

投信など金融仲介機関 28兆0745億円(同31兆6164億円)、3.3%(同3.7%)

家計 19兆3203億円(同20兆3879億円)、2.2%(同2.4%)

財政融資資金 2882億円(同3978億円)、0.0%(同0.0%)

その他 13兆8260億円(同15兆7630億円)、1.6%(同1.8%)

6月末に比べて、残高が最も増加していたのが例によって日銀である。6月末比で13兆6059億円の増加となっている。つまり6月末から9月末にかけての全体の増加分8兆2463億円以上を日銀がカバーしていた計算となる。次に増加額が大きかったのは海外で5兆8769億円増、次いで民間の保険・年金の2兆2358億円増。

反対に6月末から9月末にかけて残高を大きく落としていたのは銀行など民間預金取扱機関で3兆6817億円減、次いで投信など金融仲介機関の3兆5419億円、公的年金の3兆1345億円減と続く。銀行の残高減少は内訳をみると中小企業金融機関等が4兆9674億円も減少させており、引き続きゆうちょ銀行が国債残高を大きく減少させていた可能性がある。公的年金はGPIFの運用見直しによる影響が続いている。

海外投資家の長期国債のシェアは4.8%。国庫短期証券を含んだ数字で見ると全体の8.9%のシェアとなり6月末の8.5%から増加した。個人の長期国債のシェアは2.2%に低下した。その家計の金融資産は、1653兆6447億円と過去最高を更新した。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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