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万事休すのギリシャ、一発逆転あるのか

久保田博幸金融アナリスト

6月18日のユーロ圏財務相会合では、ギリシャの債務問題を巡って協議したが進展はなかった。財務相会合のデイセルブルム議長(オランダ財務相)は会合後の記者会見で「ほとんど進展がなかった」と説明。「ギリシャはユーロ離脱の方向に向いている」とも発言したようである。フィンランドのリンネ財務相からは「最後には何らかの合意に至るとみていたが、袋小路の終わりにほぼ到達したようだ」との発言もあった。

欧州連合(EU)のトゥスク大統領は22日午後7時(日本時間23日午前2時)から、ブリュッセルでユーロ圏首脳会議を臨時開催すると発表した。その上で、ギリシャ側に交渉打開につながる財政改革案を提示するよう求めた。ギリシャ側から提案があれば、首脳会議前に財務相会合を開く可能性もあると言及した。また、会議にはドラギECB総裁、ラガルドIMF専務理事、欧州委員会のユンケル委員長、ユーログループ(ユーロ圏財務相会合)のデイセルブルム議長もあとで参加するようである(ブルームバーグ)

EU首脳会談は25~26日に予定されているが、そこまで待つことができなくなっていると思われる。また、25日からのEU首脳会談では英国のEU離脱問題など重要案件もあり、時間が取れないとの見方もある。

いずれにしてもギリシャ側に最後の引導を渡した格好ではあるが、ギリシャが頑なな態度を覆すかどうかは依然として不透明である。ギリシャのチプラス首相は18日から20日にロシアを訪問し、19日にサンクトペテルブルクでプーチン大統領と会談した。ロシアのプーチン大統領はウクライナ情勢を巡って対立する欧州連合にいろいろと揺さぶりをかけている。仮にギリシャがユーロ、さらにはEUを離脱するとなればロシアに接近する可能性もあり、NATOの安全保障が脅かされる危険がある。これを最も恐れているのがドイツのメルケル首相とされる。これを意識したこの時期のチプラス首相の訪露とも言える。

18日にはギリシャ債権団がIMF抜きで現行の支援プログラムを年末まで延長することを提案するとの独紙の報道があった。それは即座に否定されたが、独紙というところが気に掛かる。火のないところに煙は立たないのではなかろうか。

いずれにしてもギリシャにとっても最後の切り札となりそうなのがドイツのメルケル首相で、それでも何ら譲歩なしに支援を受けることも考えにくい。ロシアを持ち出してブラフをかけてもむしろメルケル首相の態度を硬化させるだけとなりうる。

ギリシャの銀行からは15~17日の間に約20億ユーロの預金が引き出されていたようである。ECBからは18日のユーロ圏財務相会合で、ギリシャの銀行が22日に営業できるかどうか確かではないとの見解が示されていた。またギリシャ中銀のストゥルナラス総裁は、国内銀行に対し、22日のユーロ圏緊急首脳会議でギリシャ政府が債権団と合意できない場合、23日の「困難の日」に備えるよう警告したそうである(ロイター)。

2013年3月にキプロスでは、ギリシャの財政不安の影響により財政破綻の危機に直面し、小切手の換金禁止や1日当たりの現金引き出しを制限するなどの資本規制が実施されたことがある。ギリシャでも来週にも同様の事態が起きる可能性もありうる。

すでにIMFなどはギリシャを見放す態度を取っている。ギリシャのタイムリミットも6月5日から18日に延ばされ、今度は22日となるが、さすがに限界に近いことも確かであり、何らかの結論が出されることが予想される。その結論を導き出す主役がギリシャのチプラス首相とドイツのメルケル首相となろう。その結論はいまのところまったくもって見えないが、ギリシャの一発逆転はあるのか。それでもギリシャが折れない場合はデフォルトも想定しておく必要がありそうである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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