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それでもFRBの正常化路線に変化なし

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

10月2日に発表された9月の米雇用統計では、非農業雇用者数は前月比14.2万人増となり、予想の20万人程度を下回った。7月と8月の分もそれぞれ大きく下方修正された。失業率は5.1%と変わらず、平均時給も前月比横ばいとなったが、労働参加率は低下し、1977年10月以来の低水準となった。

2日の米国市場では、これを受けて少なくとも10月27、28日のFOMCでの利上げはないとみてか、株は買い戻され、米債も買われた。12月のFOMCを含めて年内利上げ観測もやや後退したとの見方も強まった。

9月のFOMCでは中国などの新興国の景気動向等が意識されて、利上げは見送ったとの認識が強いが、イエレン議長などの年内利上げに向けた意識に変化はなかった。つまり、見送ったというよりも9月は予定通りの現状維持としたとの見方もできよう。

単月の経済指標で金融政策が振り回されては、毎回のように金融政策が緩和や引き締めを繰り返すことになる。金融経済のリスクが高まっている非常時はともかく、そうでない限りは慌てての金融政策の変更は行う必要はない。

むしろ現在はその非常時の体制から脱しつつある過程にある。その第一段階のテーパリングは終了し、次のステップが出口政策、つまり利上げとなる。そのためにFRBはかなり慎重に準備を進めてきた。テーパリング以降のロードマップについても綿密に描いていた可能性がある。現実にテーパリングそのものは、月々の経済指標等には関係なく、淡々と進められてきた。

それがつまり9月に利上げがなかった理由ではなかろうか。議長会見のない10月も想定しているとは考えづらい。あくまでターゲットはテーパリングの2013年の決定時と同じ12月のFOMCであることに変わりはないと私は見ている。もちろん何かしらの非常事態が発生すれば先送りの可能性はある。

欧米市場をみても、世界的な非常時から脱しつつあることは確かであろう。ただし、一時世界経済を先導したかに見えた中国経済に陰りも見えた。ここまで新興国経済を維持させてきたのは、世界的な金融緩和政策に支えられてのものとも言える。その異常な金融緩和政策から抜け出すのも容易ではないが、麻酔薬も使い過ぎると危険であるように、金融緩和に過度に依存しない体質に戻すことも重要なことになる。FRBはかなりの信念をもって正常化路線を歩んでいるとみられ、むろん経済データーを重視はしようが、あまり目先の変動には左右されることはないのではなかろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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