びっくりポンの米雇用統計
11月6日に発表された10月の米雇用統計で、非農業雇用者数は前月比27.1万人増と前月比の伸びとしては2014年12月以降で最大となり、予想の18万人程度を大きく上回った。失業率は5%と前月から0.1ポイント低下し、2008年4月以来の低い水準となった。平均時給は前月比0.4%増、前年比では2.5%増と2009年7月以来の大幅な伸びとなっていた。
これは予想以上に強い数字となり、市場はまさに「びっくりポン」となった。「びっくりポン」とは今年の流行語大賞にノミネートされるであろう朝の連続ドラマ「あさが来た」の「あさ」の口癖である。
単月の数字でもって金融政策が決定されるわけではない。しかし、市場では12月のFOMCでの利上げについては半信半疑といった状態であったところに、この強い数値を見せられて、「データ次第」とのイエレン議長の利上げに向けた条件もこれでクリアーしたとの認識を強めたようである。
失業率からみるとほぼ完全雇用に近い状態のなか、雇用者数の増加だけでなく、平均時給も伸びている状態で、いわゆる「スラック」も減少しつつある。現在の足元の物価は低迷しているが、この雇用統計の数値からはいずれ、物価も上昇してくるであろうとの見方もできる。
果たして本当に雇用の回復が物価上昇に結びつくのか、それ以前にQEと呼ばれた量的緩和によって雇用が改善したのか、それにしては物価は上がってきていないが、それはどのように解釈すべきなのか。このあたりの謎はさておき、デュアル・マンデートについて、片方だけでもクリアーすればそれで良しということで、FRBは正常化に向けて舵を取りつつある。
今回の雇用統計の数字が予想を多少下回っても、12月の利上げの可能性がそれほど後退することはないと個人的にはみていたが、これだけ良い数値となると市場は完全に利上げを織り込みに行く。
6日の米国株式市場が売られたあとに上昇したのは、利上げの悪影響よりも、雇用の回復が示す景気の堅調さの方が意識されたためと思われる。ただし、米国債券市場では、利回り水準からみて利上げをそれほど織り込んでいなかったため、売り込まれている。米10年債利回りはテーパリングを意識した際につけた3.0%がひとつの目安になろう。外為市場ではドルが買い進まれ、ドル円は123円台に上昇した。こちらは黒田ラインとされる125円を試すかもしれないが、日米政府ともに急激な円安は望んでおらず、ここからは慎重な動きになると予想される。