雇用は回復するも物価は上がらず
11月27日に発表された10月の消費者物価指数は、指標となっている生鮮食料品を除く総合(コア)で前年同月比マイナス0.1%となった。日銀の物価目標となっている総合指数では前年比プラス0.3%となった(9月は前年比ゼロ%)。ただし、食料及びエネルギーを除く総合では前年比0.7%と9月の0.9%から低下した。
電気代などの下落幅が縮小したことなどから総合の上昇幅が拡大し、食料品などの価格が上昇したが、ガソリン価格の下落などにより相殺された格好に。11月の東京都区部の消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合が前年同月と同水準となり、6月以来、5か月ぶりにマイナス圏を脱した。
10月の完全失業率(季節調整値)は3.1%となり、前月比0.3ポイントの改善となった。0.3%の低下は2011年9月以来の大幅なものとなるようで、3.1%の水準は1995年7月以来の低水準となるとか。また、10月の有効求人倍率は前月比横ばいの1.24倍となっていた。
10月の家計調査によると、2人以上の世帯の消費支出は1世帯当たり28万2401円となり、物価変動の影響を除いた実質で前年同月比2.4%の減少となった。前年同月を下回るのは2か月連続となる。
米国と同様に日本も雇用の改善は進んでいるようであるが、それが賃金には反映されず、個人消費は抑えられ、原油価格の下落も手伝い物価も低迷している状況にある。
日銀は今回から毎月の全国消費者物価指数の公表後に、除く生鮮食品・エネルギーなどの試算結果を定期的にホームページ上で公表した。14時に日銀が発表した10月総合(除く生鮮食品・エネルギー)は前年比プラス1.2%となった。やや無理矢理感のある数字ではあるものの、それでも2.0%には届いていない。念のため確認すると、日銀の目標とする物価指数はあくまで消費者物価指数の総合指数であり、前年比プラス0.3%である。
たしかに物価を多様な側面から見る必要があり、帰属家賃の影響など含めて消費者物価のクセのようなものも考慮する必要がある。しかし、日銀がすべきことは異次元緩和から2年以上経過し、大量に国債を買えば物価が上がるとの理由説明の方にあるのではなかろうか。
消費増税による悪影響、原油価格下落による影響は確かにあったであろうが、そのような要因を含めた上でレジームチェンジは可能という前提があったはず。さらに物価は上がらずとも企業業績が回復し、雇用も回復していることで、これは異次元緩和を主体としたアベノミクスの恩恵との都合の良い解釈も一部にある。しかし、異次元緩和によるデフレマインドの払拭がなされずに、雇用が回復しているというのは物価とは別の要因も働いているのではなかろうか。円安などの影響はあったろうが、海外要因などの影響も大きかったはずである。現在の日本経済の状況についても、もう少し冷静な分析も必要なのではなかろうか。