関心が薄れた国債発行計画
12月に入りかつての債券市場であれば、市場関係者は来年度の国債発行計画が気になるところではあるが、アベノミクスの登場以来、国債発行計画への市場関係者の関心度はやや薄れてきている。
債券市場にとって需給要因に大きく関わる国債発行計画ではあるが、アベノミクス以前は投資家ニーズとの兼ね合いを見ながら、国債市場特別参加者会合や国債投資家懇談会などでの討論を経て決定されていた。もちろん今回もそういった会合での討論を元にして作成されるが、根本的に異なる点が存在する。それは国債発行額の9割近くを買い入れている日銀の存在である。日銀がいる限り、投資家ニーズなど細かく把握して年限別の発行額を作成する必要がなくなってしまっている。
アベノミクス効果がどこまであったのかについては疑問の余地は残すものの、税収も回復してきており、2015年度の国の一般会計税収は56兆円台に乗せる見通しとなっている。この増収分は補正予算に使われるであろうが、ここにきての税収増を受けて来年度の新規国債の発行額も抑制される。
来年度の新規国債は今年度計画から1.2兆円減となり、借換債は約3.5兆円減となる予想となっている。復興債や財投債の規模次第ではあるものの、この時点で今年度から5兆円程度の国債発行額の減額が想定される。つまり国債については増額せざるを得ない状況どころか、減額が可能となっている。このため、どこを増やすかというよりも、どころを減らすかという議論となっている。
税収増が見込まれるときに国債発行額を抑制し、プライマリーバランスを均衡させた上で、国債発行総額も減少させることは必要であり、いまは財政健全化にむけたチャンスとも言える。ところが、国債の需給がタイトになっているのは、異次元緩和と呼ばれる日銀による積極的な国債買入がベースになっている点に注意すべきである。いまのところ日銀の物価目標達成は見えてこない。しかし、いずれ物価目標が何かの弾みで達成されたり、日銀の国債買入で困難になる懸念がある。このような規模の国債買入を永遠に続けることもできるはずはない。
異次元緩和以前であれば、ここは素直に国債発行額を減少させるべきと主張したと思うが、いまはむしろ日銀の出口政策による市場への影響をなるべく軽減させられるように、そのリスクに備えたことを優先すべきと思われる。
来年との国債発行総額は減額されても、前倒し発行や出納整理期間内発行等でカレンダーベースの年間発行額は調整が可能である。このため今年度並みの発行額を維持させて、前倒し発行額を増加させ、将来のリスクに向けてのバッファーを作るべきではないかと思う。