コール市場の残高が過去最低に
先週のNHK連続テレビ小説「あさが来た」では、大阪の難波銀行が倒産したことなどが引き金となり「取り付け騒動」が発生し、大阪経済が大混乱に陥る大阪金融恐慌の様子が描かれていた。この大阪金融恐慌をきっかけに日本の短期金融市場の中心的な役割を担うことになるコール市場が誕生した。
日清戦争後の反動不況に加え、米国経済の低迷などを受けて日本からの輸出が低迷となり、正貨流出を防ぐ目的で、日銀は一般貸出を抑制し、貸し出し回収をはかった。1900年に九州の銀行で支払が停止し、1901年4月には大阪の第七十九銀行と難波銀行が休業した。これが全国に波及し、金融恐慌が発生した。日銀の大阪支店が救済融資をすることなどで騒動は収まるが、この金融恐慌の経験に基づき、預金に対する支払準備資金の必要性に対する認識が高まった。
このため、金融機関相互の資金繰りを最終的に調整し合う場として、1902年にロンドン市場をモデルに誕生したのが「コール市場」である。コール市場とはその名の由来が「money at call」、つまり「呼べば直ちに戻ってくる資金」と言われ、民間金融機関が短期的な手元資金の余剰や不足を調整するための市場である。
日銀の政策金利が無担保コールの翌日物となったことからもわかるように、コール市場は日本では短期金融市場の中心となっている。このコール市場の取引残高が日銀による今年1月のマイナス金利政策の導入によって、それが適用された2月16日から急減してしまった。
これはコール市場でも2006年2月以来のマイナス金利が発生し、取引が手控えられてしまった面が大きいが、さらに担保が確保できないという要因などからも取引が手控えられるようになってしまった。
短資協会が発表した市場残高によると3月23日のコール市場の残高は3兆9954億円となり4兆円を割り込んで過去最低を更新した。内訳は有担保コールが1兆1709億円、無担保コールが2兆8245億円となった。
マイナス金利導入前のコール市場の残高をみると、今年1月のピークは23兆円台となっていたことで、規模がこのときに比べて五分の一以下に落ち込んだことになる。短期金融市場の中心的な存在であるところのコール市場の残高のここまでの落ち込みは、まさに異常事態ともいえる。短期金融市場が機能不全に陥りつつあることが、この数字からも確認できる。