消費増税の行方と国債市場
4月25日の参院決算委員会での答弁で麻生太郎財務相は、消費増税について、「(自民党の稲田朋美政調会長などから)1%刻みでの(段階的な)消費増税というお話が出されていますが、「ドン・キホーテ」なんかで毎年1%上げられたら、それだけで経費が上がってたまらんだろうなと。商売やった経験者はそんなこと、逆立ちしても言いませんな。私はそういうことを言う人に、「自分で商売やったことないだろう」といつもからかうんですけれども」と発言したそうである(朝日新聞)。
自民党の稲田朋美政調会長は20日に、来年4月の消費税率10%への引き上げについて「絶対に2%ということではなく、まず1%上げる考えもある。上げ方もいろいろな道筋がある」と述べ、増税幅を1%にとどめる選択肢もあり得るとの見方を示した(毎日新聞)。
増税幅を1%にとどめる選択肢については、経済協力開発機構(OECD)事務総長のアンヘル・グリア氏も、経済状況によっては2017、2018の両年度に「1%ずつの段階的な引き上げ」を行うことが望ましいとの見解を示していた。しかし、1%ずつの引き上げは現実的には余計な費用が掛かることは必然であり、麻生財務相の意見が正論だろう。
ただし、稲田政調会長の発言の背後には、何としても増税延期ということは避けたいとの思惑も強いのではなかろうか。むろん日本の財政の行方を考えれば、消費増税はやむなしと思われるが、財政規律には敏感なはずの国債市場でも実は増税延期がメインシナリオになっている節がある。
2014年11月28日に安倍首相は首相官邸で記者会見し、2015年10月から予定されていた消費税率10%への引き上げを2017年4月に1年半先送りするとともに、衆院を解散する考えを表明した。これについては特にサプライズでもなく、国債市場に動揺を与えることはなかった。かなり前から安倍首相は任期中に二度の消費増税はやらないとの見方が市場でも強まっていたためである。
2017年4月の消費増税についても、いろいろと理由付けをしながら延期させるであろうとの見方が強いと思われる。熊本地震の影響もあり、衆参同時前挙の可能性は後退したが、5月の伊勢志摩サミット後あたりに消費増税延期を表明するのではないか。
日銀が大量に国債を買い入れていることもあり、消費増税延期で国債が急落するようなことはいまは考えづらい。しかし、国債残高は膨れあがる一方であることに変わりはない。財政規律についても完全に無視はできないが、とりあえずそのリスクも日銀の国債買入などで先送りされている格好となっている。