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異常な国債利回りのツケをいずれ払うことに

久保田博幸金融アナリスト

いまから13年前の2003年6月に国債市場ではある異変が起きていた。債券相場は1日あたりの値幅も限られながらも、じりじりと高値を更新し続け6月11日に30年債が0.960%、20年債0.745%、そして10年債0.430%とそれぞれ過去最低利回りを記録した。

この相場上昇過程において、目立ったのがメガバンクの一角や地銀を含めた銀行主体の債券買いであった。銀行などがポジションのリスク管理に使っているバリュー・アット・リスク(VAR)の仕組み上、変動値幅が少ないことでそのリスク許容度がかなり広がりをみせていた。株価の低迷にともなって債券での収益拡大の狙いもあり、必要以上にポジションを積み上げ、異常なほどの超低金利を演出した。

しかし、これもいわゆる債券バブルに近いものとなった。6月17日に日経平均株価が9000円台を回復し、この日実施された20年国債の利率が1%割れのクーポンとなったことにより、大手投資家などが超長期国債の購入を手控えた。これをきっかけにして、債券相場が急落したのである。いわゆるVARショックであった。

それから13年経って6月28日に30年債利回りは0.050%、20年債利回りは0.040%、そして29日に10年債利回りはマイナス0.240%まで低下し、過去最低を更新した。

20年国債の利率は6月23日に入札されたもので0.2%に低下している。40年国債の利回りが28日に0.05%にまで低下していたことで、この利回り水準が続けば日本の国債の利率はすべて0.1%に引き下げられてしまうことになる。

2003年6月の国債急落のきっかけは大手投資家がこの異常な低金利の水準では運用出来ないとして購入を手控えたためであるが、いまは国内大手投資家が購入せずとも日銀が大量に国債を吸い上げてしまうため、ここまでの利回り低下が生じている。

もし2003年の債券市場関係者が今回の国債利回りの水準を見たら、冗談としか思えないのではなかろうか。2003年6月の日経平均は9000円台、ドル円は120円近辺、消費者物価指数(除く生鮮)は前年比マイナス0.4%となっていた。ここにきて日経平均は下げたとはいえ15000円台、ドル円は102円台、直近の消費者物価指数(除く生鮮)は前年比マイナス0.3%となっていた。当時の人に何も説明がなければ、いや説明をしたとしても、現在の金利水準を納得してもらうことはできないのではなかろうか。

つまりこの利回り水準でも致し方ないと思ってしまっていることの方が、やや麻痺してしまっているとも言えまいか。日銀がその目的はさておき、これほどの国債を買い入れて国債利回りが大きく低下している事実に対し、本来は驚愕すべきことであり、それによるツケはいずれ支払わなければならないことになるのではなかろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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