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1998年の国債市場と現在の類似性

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

今年の8月27日に「牛熊友の会in屋形船」を開催することになった。当時参加いただいた方々からの希望もあり、久しぶりに復活することになったのである。「牛熊友の会」とは何ぞやという方もいるかと思うが、私の「牛さん熊さんの本日の債券」やコラムを読んでいただいたいる方々とのオフ会であり、「牛熊友の会in屋形船」は日経新聞夕刊でも写真付きで報じられた。

その「牛熊友の会in屋形船」が最初に開催されたのが、確認したところ1998年6月26日であった。つまり18年ぶりの復活ということになる。この1998年という年は実は日本国債や日銀の金融政策などにとってエポックメーキングというべき年であった。

1998年4月1日に日本銀行法の全文改正を内容とする日本銀行法(新日銀法)が施行された。すでに1月から金融政策決定会合が開始されていた。日銀の金融政策の決め方がこれにより大きく変わったのである。

日銀は世界的な金融システム不安の台頭を受けて、1998年9月の金融政策決定会合において3年ぶりとなる金融緩和を決定した。これを受けて長期金利は低下し、初めて1%を割り込んだ。

1998年7月の小渕政権成立後、次々に経済政策が打ち出され、1998年11月16日に発表された緊急経済対策の財源として12兆円を上回る国債が第三次補正予算にて手当てされた。翌日に米国格付け会社ムーディーズが、初めて「日本国債の格下げ」を発表した。公的部門の債務膨張も格下げの大きな理由とされていた。

そして1998年の年末に翌年度の国債発行計画が発表された際、旧大蔵省資金運用部の国債引受額が減少し、国債の市中消化額が急増することが明らかにされた。大蔵省資金運用部による国債買い切りオペの中止も発表された。債券市場にとり9月に大きく買われた反動もあるなか、需給悪化につながる複数の悪材料が重なったことで、債券相場は急落し(長期金利は急騰)、これはのちに「運用部ショック」と呼ばれたのである。

今年も年初から市場は動揺し、日銀は1月にマイナス金利政策を打ち出した。長期金利はマイナスに低下するなど過去最低を更新した。その後、日銀の金融政策に手詰まり感も出ているところに、ヘリコプターマネーまでが公然と議論されるようになっている。国債市場の流動性は低下し、何かしらのきっかけで大きく利回りが変動する懸念はありうる。

そして今年も「牛熊友の会in屋形船」が開催される。たまたまかもしれないが、一応念のため年末にかけての国債市場は注意しておく必要があるかもしれない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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