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日本でも50年国債の発行を検討?

久保田博幸金融アナリスト
(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

日本でも50年国債の発行が検討されているとWSJが伝えた。この記事によると「その詳細は安倍政権が経済対策の一環として公表される可能性がある」そうである。国債は現在、最長は40年国債であるが、これは財務省主導で発行されたものである。ところが今回の50年国債は、WSJの記事をみる限り官邸主導の気配がある。もしそうであればヘリコプターマネーを意識したものとの憶測が出てくる可能性もあろう。財務省はこの50年国債の発行を検討しているとの報道を否定した。

ただし、50年国債については、たとえば2006年の「国の債務管理の在り方に関する懇談会」の資料のなかでも大きくスペースを割いての説明もあった。財務省はいずれ50年国債の発行を目指していたことは確かであろう。ただし、直近の国債市場特別参加者会合では触れられていないなど、今回のことはやや唐突感もあったことも確かである。

少し古い資料ながら、2006年の「国の債務管理の在り方に関する懇談会」の資料を基にして海外の50年以上国債発行についてみてみたい。

フランスでは、オランダにおける年金基金の制度改正など年金に関する制度改革などにともなって、超長期債のニーズ増大に応えることを目的とし、2005年2月に50年固定利付債をシンジケート方式にて発行した。発行額は60億ユーロ。

イギリスでは「利払負担の軽減」を目的として、2005年5月に50年固定利付債を入札方式にて発行している。発行額は25 億ポンド(約0.53兆円)。さらに9月には50年物価連動債をシンジケート方式にて発行。その後、それぞれリオープンを行っている。また、2006年5 月には40年固定利付債を入札方式にて発行しており、発行額は22.5 億ポンド。

50年以上の国債は、他にポーランドで50年債、スイスでも50年債、中国では100年債が発行されている。

もし50年債発行の可能性があるのであれば、50年ではなく60年債の発行が望ましい。国債(建設国債と赤字国債)には60年償還ルールがあるため、60年国債ならば借換債の発行をしなくても済むためである。しかし、その前に30年国債や40年国債の流通市場を整備するのが先決かとも思われるのだが。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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