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企業の景況感は横ばい、物価見通しは低迷

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

10月3日に発表された日銀短観(9月調査)では、大企業・製造業DIがプラス6となり、2期連続での横ばいとなった。景気の先行きについても、プラス6ポイントと横ばいとなっていた。大企業の非製造業はプラス18ポイントと前回を1ポイント下回り、3期連続での悪化となった。

大企業全産業ベースの2016年度の設備投資計画は前年度比6.3%増となり、前期に比べ0.1ポイントの上方修正となった。

2016年度の大企業・製造業の想定為替レートは107円92銭。最近のドル円は少し戻して102円台となってはいるが、企業の想定レートからはかなり低い位置にいる。

日銀短観の大企業・製造業DIのトレンド変化と日経平均のトレンド変化が重なることは過去何度かあった。短観の大企業・製造業DIが3期連続で同じということは、今年に入りトレンド変化がないということになる。あらためて今年に入っての日経平均の推移を確認してみると、16000円から17000円あたりを中心に方向感に乏しい展開が続いている。

設備投資についても力強さを欠く。円高もあり、たとえば自動車は足元プラス8ポイントと熊本地震の影響もあった前回からは大きく回復していたものの、先行きはプラス3に落ち込むとの予想となっている。

4日に発表された短観の「企業の物価見通し」によると、全規模全産業の1年後の消費者物価指数をイメージした見通しは平均で前年比0.6%上昇と前回調査の0.7%から0.1ポイント下振れした。8月の消費者物価指数(除く生鮮食料品)が前年同月比マイナス0.5%となっていることが影響していると思われる。

日銀がマイナス金利政策まで導入しても結局、民間の期待インフレ率は動かせなかった。日銀は9月の会合で長短金利操作付き量的・質的金融緩和を決定し、オーバーシュート型コミットメントと呼ぶ政策を打ち出したが、「オーバーシュート型コミットメントは現実的な目標設定でなく、予想物価上昇率を引き上げる効果も期待できない」(「金融政策決定会合における主な意見」より)のではなかろうか。短観全体を見渡しても景気の力強さは感じられず、物価観だけが引き上げられるようなことは想像できない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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