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日銀はサイト内の国債に関する記述を「動かせる」に変更か

久保田博幸金融アナリスト
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

11日付けの毎日新聞によると「日銀が9月の金融政策決定会合で、長期金利を操作する新たな政策の枠組みを導入したにもかかわらず、公式ホームページ(HP)で長期金利の誘導は困難とする矛盾した説明が記載されているとして、改訂することを決めた」そうである。

日銀のサイト内の「金融政策の概要」のなかに「長期金利の決まり方……将来の「予想」が大事」というコーナーがある。

https://www.boj.or.jp/mopo/outline/expchokinri.htm/

すでにこのコーナーの最初には次のような注意書きがあった。

「※以下の内容については、直近の改訂から相応の時間が経過しているため、現在、アップデートした上で、「教えて!にちぎん」に統合する方向で改訂中です。」

直近の改訂から相応の時間が経過しているためにアップデートするとしている。これがアップされたのは2000年9月、その後2006年1月に改定されており、10年以上改定されておらず、相応の時間が経過していることは確かである。しかしその間、長期金利つまり裏返すと国債の価格形成に相応の変化が果たしてあったであろうか。いずれ改定されてしまうので、もし確認したい方は早めにチェックすることをお勧めしたい。

ここでは短期金利について、基本的にその時点の金融政策の影響下にあるとしている。そして、長期金利については、「その時点の金融政策の影響も受けはしますが、それとは別の次元で、長期資金の需要・供給の市場メカニズムの中で決まるという色合いが強く、その際、将来の物価変動(インフレ、デフレ)や将来の短期金利の推移などについての予想が大切な役割を演ずる、という特徴があります。」

特に改定する必要性はない文章と思われるが、「その時点の金融政策の影響を大きく受けやすい」あたりに修正されるのであろうか。金融政策では動かせないとしていたはずの長期金利に対して、「動かすことは可能」との認識に変更してくる可能性がある。

「長期金利は、今後の長期間にわたるインフレ、デフレや短期の金利に関する予想(金融の専門家は「予想」の代わりに「期待」という言い方をします)などに大きく左右されます。「インフレ期待は長期金利を高くする」、「物価安定期待は長期金利を低くする」、「設備投資の期待収益率が上がれば長期金利も上がる」ということです。」

どのような専門家が「期待」という言葉を使うのかは知らないが、現在の国債のマイナス金利が、前年比マイナスとなっている物価そのものに影響されているとみても間違いではないのではなかろうか。もし日銀の異次元緩和で物価が上がると市場参加者が「期待」すれば、長期金利は上がったはずである。それが上がらなかったのは日銀が長期金利を押さえつけたというよりも、そもそもそんな期待はなかったと見た方が正しかったように思われる。このあたりどのように改訂されるのかも興味深い。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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