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日銀の国債買入の行方、市場との対話がより重要に

久保田博幸金融アナリスト
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

2月28日の夕方に日銀は「当面の長期国債等の買入れの運営について」を発表した。今回からオペ通告日を事前に発表することとなり、1年超5年以下の中期ゾーンは6回、5年超10年以下の長期ゾーンも6回。そして10年超の超長期ゾーンは5回となる。1月は1年超5年以下の中期ゾーンは5回と12月の6回から減額したが、2月は6回に戻し、3月も6回となる。

こちらも注目されていた3月初回の金額であるが、どうやら今回から初回のオファー金額は提示しないようである。買入日程の発表で不透明要素がひとつ減った格好ながら、金額に関しては不透明要素が増えた格好となる。

日銀は今年1月の国債買入で中期ゾーンを一回分スキップした。これをきっかけに債券市場は動揺した。日銀は国債買入を減額しようとしており、ある程度の長期金利の上昇は容認するのではないかとの観測が出た。日銀は長期ゾーンの買入を一回程度400億円増額し、金利上昇は抑制しようとしたが、市場の動揺は収まらず、その結果、2月3日に10年債利回りが0.150%まで上昇し、日銀はこの日の12時半というイレギュラーな時間帯に「指し値オペ」をオファーした。これで市場の動揺は収まるが、日銀は2月10日の国債買入で超長期ゾーンを100億円ずつ増額し、超長期債の利回り上昇も抑えようとした。

日銀が何故、1月に中期ゾーンの買入を一回スキップしたのか。これは4月以降の来年度の国債発行額の削減を見据えたものであったと想像される。しかし、これはテーパリングと認識されると円高や株安、さらには長期金利の上昇を招く恐れもある。国債買入の減額はいずれ必要になろうが、2月の債券市場の動揺で結果として増額となってしまったことになる。

いまの日銀の金融政策である長短金利操作付き量的・質的緩和政策では、量を残した上で長期金利の目標値を設定している。これはリスク回避の動きやデフレ圧力が強まる際には機能したかもしれないが、景気や物価がしっかりするなど正常な状況となり、海外要因や物価動向などによる金利に上昇圧力が加わると長期金利を押さえ込むことも難しくなる。その結果、大量の国債をさらに買い入れなければならない懸念も生じる。

4月以降の国債需給はよりタイト化することが予想されるため、このままのペースで日銀が国債買入を継続できるのかという疑問も生じよう。今後は物価の上昇も予想される。このため長期金利の目標値に対して幅を持たすなり、国債買入を減額しても市場に動揺を起こさせないようにするためのより一層の市場との対話も必要になってくるのではないかと予想される。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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