Yahoo!ニュース

昨年末時点での日本国債の保有者

久保田博幸金融アナリスト
日銀の資金循環統計より

日銀は3月19日に資金循環統計(10~12月期速報値)を発表した。これによると個人の金融資産は昨年末時点で約1800兆円となり、過去最高となった。9月末時点では約1752兆円となっていた。個人の金融資産の内訳は、現金・預金が前年比1.8%増の約937兆円となった。株式等が同0.4%減の約167兆円、投資信託は0.2%増の約96兆円となっていた。昨年11月の米大統領選挙のあとの円安株高などを受け、株式のマイナス幅が縮小し、投資信託は減少から増加に転じた。

この資金循環統計を基に国債(短期債除く)の保有者別の内訳を算出してみた。

日銀の国債保有残高は370兆8253億円となり、38.7%のシェア。前期比(速報値)からは14兆544億円の増加。

保険・年金基金は236兆4668億円(24.7%)、6兆604億円減。

預金取扱機関(都銀や地銀など)で203兆5814億円(21.2%)、11兆3835億円減。

海外投資家で53兆1004億円(5.5%)、1兆9917億円減。

公的年金の49兆2160億円(5.5%)、1兆8102億円減。

家計の12兆7283億円(1.3%)、5642億円減。

その他が32兆1628億円(3.4%)、5兆2539億円減。

2016年9月末(速報値)に比べ、国債(短期債除く)の残高は約13兆円減少し、約958兆円となった。

9月末(速報値)に比べて大きく増加したのは、国債を買い入れている日銀で約14兆円の増加となった。増加は日銀だけとなり、今回は海外も減少させていた。

9月末に比べて大きく減少したのは中小企業金融機関等(ゆうちょ銀行含む)の約6.4兆円減、企業年金の1.2兆円減、国内銀行の約4.4兆円減、生命保険の約4.1兆円減などとなっていた。

日銀は昨年1月にマイナス金利政策を導入し、2月9日には10年債利回りもマイナスとなった。マイナス金利政策そのものに対して金融界からその弊害も指摘された。金融機関はこの間、マイナス金利の影響も加わって国債の保有残高を減少させた。

日銀は昨年9月の金融政策決定会合において総括的な検証を行った上で、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」と名付けられた金融政策の導入を決定した。この政策は国債のイールドカーブのスティープ化を促すためのものではあったが、10年以下の国債利回りは抑え込まれた格好となった。日銀の巨額の国債買入が続いていたこともあり、それは結局、金融機関などの保有する国債を減少させることとなった。

短期債を含めた国債全体の数字でみると残高は約1076兆円となり、日銀が約421兆円で39.1%のシェアとなっていた。そして海外勢の残高は約113兆円と短期債を含めると国債全体の10.5%のシェアとなっていた。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

牛さん熊さんの本日の債券

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月20回程度(不定期)

「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

久保田博幸の最近の記事