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家計資産、わずか「20万円」の考察=「単身世帯」は40倍以上の猛烈な格差

窪園博俊時事通信社 解説委員
調査では、無産家計が半数近くも。(ペイレスイメージズ/アフロ)

先般、「家計資産『1000万円超』に驚くのは正しい」と題する記事を書いた。日銀が事務局を務める金融広報中央委員会の『家計の金融行動に関する世論調査』の「2人以上の世帯」を解説したものだが、今回は続編として同調査の「単身世帯」を取り上げたい。家計状況を見ると、実勢に近い資産はわずか「20万円」。無産家計の比率も増大中で、2人以上の世帯に比べ、猛烈な格差が生じている。

持てる者と持たざる者の差は激しい

今年の調査で「2人以上の世帯」は、保有資産の平均値が「1078万円」、中央値は「400万円」となった(実勢に近い数字が中央値であることは前回の記事で解説)。さて、「単身世帯」はどうなっているのか。調査結果を見ると、圧倒的な格差が生じている。平均値「822万円」に対し、中央値はわずか「20万円」で、2007年以降では前年に続いて最低水準となった(下図参照、金融広報中央委員会の資料より)。

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平均値の推移を見ると、11年の641万円を底に持ち直す傾向にある。一方、中央値も同年(60万円)から増加に転じたが、13年の100万円で頭打ちとなり、昨年には20万円に落ち込んだ。平均値が中央値の何倍なのかを計ると、2人以上の世帯は2倍程度だが、単身世帯は40倍以上もある。持てる者と持たざる者の差がそれだけ激しいわけだ。近年の倍率は、13年7.98倍、14年10.32倍、そして昨年は38.65倍に急上昇。今年はさらに上がって41.1倍に達した。

10人のうち、1人か2人は預金口座にお金がない

また「金融資産を保有していない」との回答は調査対象(2500人)の48.1%(昨年は47.6%)に上った(下図参照、同)。これは実勢に近い「20万円」ですら多い、と受け止める向きが半数近く存在することを意味する。さらに「銀行・証券口座に残高がない」との回答は14.4%となった。10人のうち、1人か2人は預金口座にお金がない、という状況にある。

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資産格差の倍率は13年以降、上昇の一途であることは前述した通りだが、さかのぼってみると、6倍から10倍の間を上下している。この10年、格差拡大が一貫して強まってきたわけでない。これに対し、無産家計の比率は着実に増大傾向を示した。上の図のように、全体に占める比率は、07年は30%程度だったが、それ以降、じりじりと上がり続け、この2、3年で上昇ペースが速まり、半数近くになっている。

この調査では、「金融資産」の定義として自宅用や事業用の不動産などは除外されている。「運用目的の資産」「将来に備えて蓄えた資産」として預貯金や有価証券などの保有状況を調べている。従って、無産家計には、不動産を持ちながら運用目的の金融資産を持たない人も含まれる可能性がある。その分を割り引いても、平均値と中央値の倍率や無産家計の比率などの動きから、単身世帯の格差はやはり非常に大きく、しかも格差は拡大中と受け止められる。

時事通信社 解説委員

1989年入社、外国経済部、ロンドン特派員、経済部などを経て現職。1997年から日銀記者クラブに所属して金融政策や市場動向、金融経済の動きを取材しています。金融政策、市場動向の背景などをなるべくわかりやすく解説していきます。言うまでもなく、こちらで書く内容は個人的な見解に基づくものです。よろしくお願いします。

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