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働けなくなった若者、本人「どうしたらいいのかわからない」保護者「そのうちなんとかなるだろう」

工藤啓認定特定非営利活動法人育て上げネット 理事長
働けなくなるということ

若年無業者、特に、「就労を希望しながらも就職活動ができない非求職型」「就労を希望する前段階で悩む非希望型」に対して、支援機関の多くは「保護者支援」を実装している。悩みを抱える保護者同士が集まる場を提供する親の会や、(教育段階を含む)子どもが現状から変化することに寄り添う支援プログラムなど、その目的やプロセスは多様だ。

身体的、精神的に身動きが取れない若者とは、直接的に接点を持ちづらい状況を鑑み、家族や親族を支援する(むしろ頼ると言ってよいと思う)方法だ。一昔前であれば、「本人が来られないのだから何もできません」と窓口で無下に断られた例も多々あったが(残念ながらいまもかなり残っている)、いまではだいぶ変わってきた。

もちろん、これは支援という枠組みのひとつの手段であり、若者自身が大きなお世話、必要ないと考えていることもある。逆に、このような支援がほしい、あってよかったという結果になることもある。つまり、どのような状況の若者(保護者など)への万能薬ではないが、一定程度の効果がるというものだ。育て上げネットでも不定期であるが家族向けのセミナーなどをやっているが、ニーズの高さを感じている。

どうしたらいいのかわからない
どうしたらいいのかわからない

私たちが先日公開した調査結果では、無業になった若者の75%近くが「どうしたらいいのかわからない」と回答し、長期化するにつれその割合は上昇する。

支援という枠組みを提供する立場から見れば、本人がどうしたらいいのかわからなくなっているところへ、どうしたら接点を持つことができるかが課題となる(アウトリーチという言葉が使われることもある)。チラシやポスターなど物理的に見てもらえそうな情報公開をすることもあるし(ウチはほとんどしなくなった)、インターネットを活用して接点可能性を高める動きもしている。

そのなかで、家族(保護者、兄弟姉妹、祖父母、親族など)というのがひとつの接点可能性が高いと認識されている。実際、保護者の相談を受け、若者自身と出会えるかどうかは相談者側および所属する団体・組織の力量に依拠することが多いが、どうしたら接点を持てるのかわからない若者の所在を知るひと、という点において家族は大変重要なキーマンになる。

家族だからといってすぐに相談に行くなどの行動を起こせるわけではない。子どもがいつか動き出すことを見守ることもあれば(これは歴史的に賛否があるが、動き出す若者がいれば、動き出せない若者がいるのでどちらかにわけられない)、地域の目や、どこまで家族としてコミットしていいのか線引きが難しいなど、さまざまな事由がある。

ただ、「そのうちなんとかなるだろう」と考えるのは少数派のようだ。

そのうちなんとかなるだろう(図20403)
そのうちなんとかなるだろう(図20403)

子どもが無業になってから6ヶ月~1年で75%を越える保護者が「なんとかならないのではないか」と考えている。一方、3年から6年、それ以上、子どもの無業期間が続いている場合、保護者の「なんとかなるだろう」という割合が半数にまで上昇する。おそらく、早い段階でアクションを起こすべきと考える保護者と、そのうちなんとかなると思いながら(いまも思っている)3年を越えてきている保護者に大別されるものと考える。

若者支援は現状39歳までを示すことが多く、政府・行政の政策を見てもここが上限年齢。民間でもこれにあわせて対象年齢をあげてきている(2011年頃までは34歳が大半だった)。一方、ひきこもりやニート状態の若者が40歳、50歳を迎えており、「若者」という概念と「支援」の枠組み、対象者の「状況・状態」が混在し、さまざまな意見が交わされている。

若者支援の対象が39歳までがおかしいと考えるひともいれば、そもそも支援対象者が若者だけではないのではと疑問を呈するひともいる。どちらも、直面する問題、関心ある対象によって考えることが変わる。当然のことだ。法律や政策、制度を変えていくための動きも必要であり、民間としては強みを活かすのか、幅広い対象者を受け入れるのか、または「支援=被支援」という関係ではないあり方を創っていくのか。端的に言えば、全部必要であり、それぞれが互いを尊重しつつ、できることを最大限やっていくでいいのではないかと思っている。

認定特定非営利活動法人育て上げネット 理事長

1977年、東京都生まれ。成城大学中退後、渡米。Bellevue Community Colleage卒業。「すべての若者が社会的所属を獲得し、働くと働き続けるを実現できる社会」を目指し、2004年NPO法人育て上げネット設立、現在に至る。内閣府、厚労省、文科省など委員歴任。著書に『NPOで働く』(東洋経済新報社)、『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『若年無業者白書-その実態と社会経済構造分析』(バリューブックス)『無業社会-働くことができない若者たちの未来』(朝日新書)など。

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