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双子妊娠がわかった瞬間に夫が考えなければならない3つのこと

工藤啓認定特定非営利活動法人育て上げネット 理事長

夫婦どちらも三人兄弟ということで、子ども3人が理想だと話をしていました。それが生育環境だったので、三人兄弟以外は想像もつかないわけです。

2015年に入り、第三子を授かりました。そして、それからしばらく経っての妊婦検診日、妻からLINEメッセージが入る。

「双子だって!」

ちょっとだけ驚いたものの、そのときは「自分の人生に双子が登場するなんて思わなかったなぁ」くらいの印象。双子経験はもちろんのこと、第一子も第二子も単独登場だったので、双子にまつわる知識もなかったんです。

持っている知識は、キャプテン翼に登場する立花兄弟か、「コウノドリ」5巻のエピソードあたりだけでした。

しかし、それから双子(多胎妊娠)を調べまくりました。現在、26週目で順調に双子は育っていますが、多胎妊娠がわかった瞬間に夫が考えなければならないことが3つあります。

1. いま、妻がいなくなっても大丈夫ですか?

双子の形態は3パターンありますが、なんにせよ母体リスクが高いです。検診にはほぼ毎回付き添ってますが、ほぼ毎回、「管理入院」について言われます。母体やお腹の双子の状況に異変があれば、即入院です。

これは準備できないことが多いそうです。母親は何も問題を感じておらず、普通に検診に来ただけなのに、その日から数ヶ月入院という例はいくらでもあるそうです。本当に「その日」が予期せぬ形で来るみたいで、とにかく準備をしておいてくださいと言われます。

いまから数ヶ月、いきなり父子家庭になっても大丈夫ですか?保育園の送り迎えや食事作りといった直接的な子育てだけでなく、予防接種や保育園(学校)行事、提出書類や家計に関する支払いのすべてを把握してますか?

子育てを含む家庭環境への急激な変化に、現在の働き方は対応可能ですか?送り迎えもひとりになります。これまで分担していたものは分けられなくなります。子どもが小さければ、仕事を優先することはできなくなります。

シッターなどを使うのであれば資金は大丈夫ですか?実家に助けてもらえますか?お隣さんやご近所さんに緊急の際にお願いできる関係性を作ってますか?

2. 妻が動けなくなっても大丈夫ですか?

現在、26週目に入ったところです。だいたい6ヶ月です。既にご出産を経験されていればわかると思いますが、「臨月」状態です。これから3~4ヶ月をかけてさらに大きくなります。大きく"なれる"のだろうか?と不安になるほどです。

臨月になれば、安心・安静にすることはもちろんですが、物理的にできないことも増えてきます。そもそもお腹の子どもだけで精一杯、命をかけているわけで、それ以外のことは極力避けてすら、身体は大変な状況です。

買物、炊事、家事はもちろんのこと、そもそも移動することも難しくなってきます。6ヶ月に入ったところで、ウチは産休にもうすぐ入ります。まだ動きは取れますが、もう第一子、第二子を寝かせつけたりすることは難しくなっています。保育園の送り迎えなどはほぼ不可能です。

管理入院による父子家庭状態と、もう少しすると訪れる二人揃っているが「父子家庭状態+介護(ウチではそう呼んでます」のどちらが自分(夫)に負担がないのかよくわからなくなってきます。妻がいてくれることで、子どもが寝ているときなどちょっと外出ができますが、妻がいることで第一子、第二子は甘えに行きます。ちょっと可哀想ですが、お腹の双子を守るために引き剥がす作業もしなければなりません。

3. 出産後も家庭にちゃんと時間割けますか?

まだ出産後のことを考える余裕がないですが、ある程度見えていることがあります。それは、妻が育児休暇に入っても、上の子どもたちに活用できる時間も体力もないだろうということです。ひとりでも大変でしたね。それが同時に二人となります。

自治体によりますが、育児休暇中は「働いていない」ことから、既に保育園に入園している上の子が通えなくなったり、16:00とか17:00お迎えの時短になります。出生してすぐは簡単に外へ連れ出せません。出生して3ヶ月くらいたっても、二人の子どもを抱えながら、もう一人、もう二人の子育てを並行することは難しいと思われます。

最低でも出産後や産褥期は、双子および身体の回復にあてる時間と環境の確保が必要になります。ここでの無理は回復を遅らせ、ずっと後になって影響が出ることもあるそうです。

正直、いまは戦々恐々としながら暮らしています。子育てを含む生活全般でやるべきことは、ある程度、妻から引継ぎもしつつ、情報をインプットしてもらってます。多胎妊娠がわかって、あわてて実家に二人の子どもを連れて宿泊の練習を始めたり、ご近所さんに「本当に何かあったら助けを求めますね!」といままで以上にコミュニケーションをとるようにしています。

仕事に関しても、講演や講師の依頼は、依頼主に事情を説明し、本当に当日欠席となるリスクを抱えていることを率直に伝えています。また、イザというときの代理を立てるため、テーマに応じて社員のスケジュールをブロックしてもらっています。

これまで二回、育休を取得しているため、自分不在の期間に備えた準備などは心得ているつもりですが、突発的に不在となる可能性があるため、早い段階から周囲との情報共有やアサインするタスクのシェアなどに取り組んでいます。

出産後はまったく読めませんが、育休取得はもちろんのこと、年内または年度内は時短勤務が基本路線になりそうです。何をどう準備すべきかすら見通しが立ってませんが、きっと不足時間を夜や休日に補うしかない気がします。業務コントロールができるかもわかりませんし。

いまは遅延リスクなどに備え、17:00には地元に戻れるよう都内での仕事は時間を限定しています。いまはまだ子どもたちを寝かせつけた後、妻に任せて外出が可能ですが、夜の予定はありません。どうしても遅くなりそうなとき、保育園に預けられない場合には、外部リソースの活用予約をするようにしています。

それでもなお、本当に家庭が回るのか、家庭と仕事の両立が可能なのかもわかりません。最前の準備をしておき、幸運が続けば特に困ることがないかもしれませんが、何かひとつ不具合があれば総崩れになる不安もあります。

双子を授かるということは、とても幸せで、なかなか経験できないものなので楽しみですが、そもそも母体リスクが高いものですので、そこから目を背けずに最大限の準備努力をしなければなりません。大げさでもなく、命を懸けて子どもたちを育んでいる妻を横目に、夫としての僕の覚悟や努力はどこまでいっても小さなものです。それでも、直接的な言葉や、雰囲気で感謝をしてもらえると、「そんなの当たり前だから」とか言うわけです。ポーカーフェイスを見繕って。

認定特定非営利活動法人育て上げネット 理事長

1977年、東京都生まれ。成城大学中退後、渡米。Bellevue Community Colleage卒業。「すべての若者が社会的所属を獲得し、働くと働き続けるを実現できる社会」を目指し、2004年NPO法人育て上げネット設立、現在に至る。内閣府、厚労省、文科省など委員歴任。著書に『NPOで働く』(東洋経済新報社)、『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『若年無業者白書-その実態と社会経済構造分析』(バリューブックス)『無業社会-働くことができない若者たちの未来』(朝日新書)など。

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