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少年院で迎える成人式

工藤啓認定特定非営利活動法人育て上げネット 理事長
少年院での成人式には立ち直りの支援をする民間関係者や保護者が参加する(ペイレスイメージズ/アフロ)

コンビニ深夜のアルバイトを終え、憂鬱でした。降り積もった雪のなかで迎えた成人式は、会場に向かうことすら躊躇する道路状態で、成人式に行くかどうか迷うレベル。それでも一生に一度の機会なのでスーツを身にまとい会場に。実際、式典で何があったかは覚えていませんが、久しぶりにあった小中学校時代の友人と近況を報告し合いました。

私には地元の成人式に出席する、しないの選択肢がありました。そしてそこにいけば少なくない友人と会える機会もありました。

昨年から本格的に矯正教育分野での支援活動が始まるなかで、ふと思ったのが「少年院に在院する子どもたちの成人式はどうなっているのだろう」ということです。

いくつか調べてみると、在院中に成人式を迎えた少年たちのために院内で成人式が行われているということでした。

東京新聞:牛久の少年院 「迷惑かけた分、社会に恩返し」

「お母さん、産んでくれてありがとう」と呼び掛ける少年も。親への感謝の言葉も目立ち、保護者席には、目を潤ませたり、肩を震わせたりする家族の姿も見られた。

出典:東京新聞

毎日新聞:人生力強く、自分大切に 親化や少年院、門出で更生誓う

妻子を持つある新成人は「ここを出た後は、妻や母をはじめ大切な人たちを守り、愛する娘へ親として大きな背中を見せられるような生き方を誓います」と涙を浮かべた。

出典:毎日新聞

苫小牧民報:更生誓い大人の道へ 北海道少年院で成人祝う会

新成人たちは、大人としての誓いの言葉を述べた。「たくさんの人に迷惑を掛け、家族を裏切った。一日一日をしっかり生活し、母さんの自慢の息子になれるよう頑張ります」「自分を磨き、一回りも二回りも大きくなり、社会で2度と失敗しないよう、強い意志を持って生きていきます」

出典:苫小牧民報

茨城新聞:牛久の少年院で成人式 16人、後世へ決意新た 「被害者に謝りたい」

「ずるい人間でした。少年院に入らなかったら、いくら年を重ねても変わらなかった」「うまくまとまりませんが、必死に考えて書いた言葉です。被害者に謝りたい」

出典:茨城新聞

新成人は、立ち直りを支援する民間関係者や保護者の前に立ち、更生への言葉を紡ぎます。ほとんどの少年院で成人式が行われているようですが、成人式開催は法令で規定されているものではありません。

通常、少年院では法令基準に沿ってカリキュラムを組みます(少年院矯正教育課程の編成)。生活指導、職業指導、教科指導、体育指導、特別活動指導の5つの指導分野を組み合わせながら、子どもたちに合わせてカリキュラムをカスタマイズします。それには地域特性や協力者(団体)のリソースも関係してきます。

実際、茨城農芸学院の小山定明院長にお聞きしてみたところ、

「成人式を行っている少年院は、少年院矯正教育課程において特別活動指導分野の『行事』の細目に成人式を組み込んでいることが一般的です。ただし、組み込んでないからやってはいけないというわけではありません。当院では去る6日に12人の少年が出席して成人式を行いました。」とおっしゃっています。

また、「子どもたちの心境はさまざまですが、やはり、大人になったという意識を強く持ち、これまでの自分の生い立ちや非行、家族との関係を振り返り、また将来を見つめる機会となります。ところで、少年院では、法律上の条件はありますが、裁判所の決定により26歳まで教育を受けることができます。家庭裁判所から少年院送致の決定を受けて少年院にいるひとであれば、法律上は年齢にかかわらずひとくくりなので、20歳を超えたからといって処遇が変わることはありません。」ということです。

いま退院した少年で、希望者へのご支援を差し上げるとともに、少年院に在院する少年へのご支援が始まっています。実際に彼らの年齢を知る機会はありませんが、もしかしたら、今年成人式に参加するはずの子どもたちもいるかもしれません。家族や親族に囲まれ、また、地域の方々や友人とともに成人式を迎えることはできませんが、矯正教育の観点から少年院内で行われる成人式で、立ち直りを応援する大人たちや保護者に囲まれる機会は、退院後の立ち直り、自立のための後押しになるのではないかと思います。

現在、少年院から退院した子どもたちが安心して再チャレンジできるよう支えるため、クラウドファンディングを使って応援者を募っています。厳しい家庭環境や経済状況にある子どもたちも少なくなく、「みんな」で彼ら、彼女らを支えていけたらと考えています。

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認定特定非営利活動法人育て上げネット 理事長

1977年、東京都生まれ。成城大学中退後、渡米。Bellevue Community Colleage卒業。「すべての若者が社会的所属を獲得し、働くと働き続けるを実現できる社会」を目指し、2004年NPO法人育て上げネット設立、現在に至る。内閣府、厚労省、文科省など委員歴任。著書に『NPOで働く』(東洋経済新報社)、『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『若年無業者白書-その実態と社会経済構造分析』(バリューブックス)『無業社会-働くことができない若者たちの未来』(朝日新書)など。

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