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サムスンの”これがホントのウェアラブル"特許について

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
US20140135960

セミナーの準備のためにサムスンのウェアラブル関連特許についていろいろ調べていてちょっとおもしろい公開公報を見つけたのでご紹介します。

公開番号US20140135960”Wearable device, display device, and system to provide exercise service and methods thereof”、実効出願日は2012年12月15日、現在審査中で、まだ実体審査が始まったばかりという状況です。

アイデアは単純で、ウェアに多数のモーション・センサー、バイオセンサー、バイブレーターを付けます。それを着て運動(ヨガ、ピラティス、ゴルフ、ダンス)を行ない、お手本ポーズのデータと比較して違っている場所にはバイブレーター経由で教えてあげるというものです。

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正直、ちょっと思いつき感が強く、実際に実装するのは困難な気がします。たとえば、バイブレーターや通信機能を作動できるくらいのバッテリーをどうするかという問題があります(フレキシブルなバッテリーをウェアに織り込むアイデアも開示はされているのですが)。また、お手本の人との体格や柔軟性の違いもあるのでそもそもトレーニングとして効果的なのかという点もちょっと疑問です。

サムスン社内の出願件数ノルマ達成のために無理矢理出願したものであるような気がします。とは言え、まったく無意味というわけではありません。今後10年後くらいにセンサーやバッテリーの小形化によりこの特許のアイデアのようなウェアが当たり前の存在になる可能性があります。もしそうなるとこの特許(もちろん権利化出来ていれば)をサブマリン的に(公開されているので厳密にはサブマリンではないですが)権利行使できる可能性があります。サムスン級の企業であれば特許出願・維持の費用など知れてますので、ダメ元で将来の投資としていろいろと出願しておく発明のひとつと見ることもできます。

こういう実現性は怪しくてもとりあえず出願しておく戦術は大企業あるいは半分趣味でやってるような個人発明家であればよいかもしれませんが、一般的な小規模事業者であればやはり製品・サービスとして近い将来実現できることを前提とした特許出願を行なうべきです。

弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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