TPPによる著作権侵害罪の非親告罪化で何が変わるのか?

NHKニュースのサイトに「TPP交渉 著作権侵害は「非親告罪」で調整」という記事が載ってます。

TPP(環太平洋パートナーシップ協定の交渉)で、各国は映画や音楽などについて著作権侵害があった場合に原則、作者などの告訴がなくても起訴できるようにする「非親告罪」とする方向で調整を進めていることが分かりました。

適用範囲について各国が判断できる余地を残す案が示されたことで、これまで慎重な姿勢だった日本も受け入れる方針です。

ということだそうです。

ちょっと前に報道があった保護期間延長についてもそうですが、著作権法のように国民の生活への影響が大きい案件について秘密裏に協議が行なわれて、それが特定メディアへのリークにより小出しに漏れ伝えられて来るという状況は困ったものですね。

さて、非親告罪化も、保護期間延長の話と同様に、Wikileaks暴露版TPP協議文書から判断する限り、ほぼ確実にTPPに取り入れられるであろうと見られていました(参考過去記事)。何しろ、参加国の中で反対していたのはベトナムだけだったのですから(日本は、「権利者の市場での活動に影響を与える場合に限る」との制限を加えてもよいのであれば、この条文案に賛成するという条件付き賛成案でした)。

NHKの報道から見る限り、この日本の条件を最終案に取り込むことになったということのようです。

では、非親告罪化により何が変わるのでしょうか?(非親告罪って何?という方は、Wikipediaのエントリー「日本の著作権法における非親告罪化」をご参照ください。

ここで、重要なポイントは、著作権侵害の「犯罪」は他の犯罪とは特性が異なるという点です。著作権法のどこを見ても他人の著作物をコピーすると違法とは書いてありません。著作者はその著作物をコピーする権利を専有すると書いてあるだけです。つまり、著作権者の許可があれば、著作物をコピーしても違法ではありません。これは、たとえば、殺人だとか児童ポルノ作成等の犯罪とは本質的に違います。本人の許可があっても人を殺せば違法かつ犯罪です。

なので、著作権侵害罪が非親告罪化されたところで、権利者の意思とは関係なしに有罪になってしまうということはあり得ません。ただし、「まあ違法と言えば違法なんだけど特に実害もないし大目に見ておくか」という態度の権利者(いわば、「空気としてのフェアユース」状態)が、警察に公式に聞かれると「建前上はOKと言うわけにはいかないので..」と態度を変えてしまう可能性もあります。また、仮に不起訴になったところで、警察の捜査が入っただけで社会的信用を失って損害を受けるということもあります。

ということで、やはり非親告罪化された著作権侵害罪が濫用されるのは問題です。ここで重要なのが前記の「権利者の市場での活動に影響を与える場合に限る」という条件です。

たとえば、海賊版DVDを工場で大量生産する、劇場公開前の映画をネットでダウンロード可能にしまう等々、客観的に権利者の損害が明らかであり、速やかな停止が必要とされる行為であれば、非親告罪化することは意味があると思います。こういうケースと、コミケでのパロディ作品の販売等を一緒くたにするのは明らかに問題でしょう。

重要なのは、非親告罪化すべき悪質なケースと、非親告罪化すべきでない(さらには、民事で解決すべき)非悪質なケースの線引きです。

国内の法制化をちゃんとやればコミケ等の活動に直接的影響が出ることはないと思います。特に、パロディ的な作品のクリエイターにとっては、日本の著作権法改正でどういう線引きが行なわれるのかを注視していく必要があるでしょう。