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マイケルジャクソンの斜め立ち特許について

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
出典:USPTO

#この話、知ってる方は「またか」と思われるかもしれませんが、最近またソーシャル・ニュース界隈で話題になっているようなので昔のブログ記事の焼き直しで書きます。

マイケルジャクソンの有名なダンスムーブとしてムーンウォークに並ぶものとしてスムーズ・クリミナルのPVで有名になった「斜め立ち」があります。背筋を伸ばしたままで通常ではあり得ない角度まで前傾するというムーブです。さすがに体を鍛えただけではちょっと実現不可能で、ちゃんと仕掛けがあります。そして、その仕掛けはマイケルジャクソンを発明者のひとりとして特許化されていました。米国特許番号5255452号"Method and means for creating anti-gravity illusion"(反重力イリュージョンを創造する方法と手段)です。

床からペグが出ており、そこにかかと部に切り込みを備えた靴をひっかけて斜め立ちできるようにするというアイデアです。昔、マイケルのバックダンサーの一人が、かかとがなかなかはずれなくて焦っている映像を見たことがあります。

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USPTO(米国特許商標局)に併設されている発明博物館でも本特許が紹介されているそうです。

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さて、スムーズ・クリミナルのリリースは1987年で本特許の出願日は1993年なので新規性を喪失しているように思えますが、スムーズ・クリミナルのPVでは、腰にハーネスを付けてワイヤーで引っ張っているそうです。これでは、ステージ上で再現しにくいということから、このような仕組みを発明したと明細書に記載されています。

また、この特許は本来ならわりと最近まで存続していたはずなのですが、2005年に特許料不納により権利が取り消されています。理由はわかりませんが、2005年はマイケルが裁判で苦労していた時期の直後なので、それどころではなかったのかもしれません。同様のムーブをジャニーズ(たしかKAT-TUN)がやっているのを見たことがありますが、もとより日本では特許が成立していないですし、今では権利切れなので同様の仕掛けを使うことは特許的な問題はありません。

なお、マイケル・ジャクソン(Michael J. Jackson)が発明者に含まれている他の特許出願についても調べてみましたが、本人と思われるのはこれひとつで、他は同姓同名のようです。

弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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