アップルはなぜ今頃になってVRゴーグルを特許出願したのか?
「アップル製VRゴーグル登場か?米特許商標庁に申請」なんて記事を読みました。Google Cardboard等に類似したスマホを差し込んで使うタイプのVRゴーグルに関するアップルの特許出願が最近公開(公開番号20150198811)されたという内容です。
この記事を読んで「何で今頃これを特許出願?」と思った人もいるかもしれません。しかし、実は、この特許出願、公開されたのは最近なのですが、その起源は2008年9月にまで遡ります。この元出願が今年の2月に登録されたので、アップルがその継続出願を出願し、それが最近公開されたというだけのことです。
特許出願は一発芸的に登録されればそこで終りという場合もありますが、別の切り口で権利化したり、特定の製品への権利行使を狙って登録された後に継続出願を行なうことも多いです。特許はいったん登録されてしまうと権利範囲の大幅な変更は不可能になるので、継続出願や分割出願によって常にペンディング状態の出願を残しておくのは良い戦略です。もちろん、出願や維持のためのの費用はかかりますが、アップルクラスの企業なら問題ではありません。
なお、今回公開された継続出願のクレームは「ヘッドマウントキャリアとディスプレイとタッチセンサーから成るシステム」といっためちゃくちゃ広い範囲になっています。これは、以前にSTAP特許の記事でも書きましたが、とりあえず特許をペンディング状態に置いておきたいときによく使われるテクニックのようです。この継続出願が最終的にどのような形で権利化されるか(あるいは拒絶されるのか)は何とも言えません。
ということで、今気にすべきは今年の2月に登録された元出願(8957835)の方です。こちらは前述のとおり2008年の出願が忘れたころになって登録されていますので、いまでは当たり前になったアイデアが特許化されている可能性があります(公開公報はでているのでサブマリン特許というわけではないですが、それにちょっと近いです)。2008年以降にこの種のアイデアを製品化した企業は気にしておくべきでしょう。
この8957835号の方のクレーム1の内容をきわめて大ざっぱに言うと、
1. 携帯情報機器の画面でイメージを表示できるように装填できるフレーム
2. フレームに装填されたかどうかにより携帯情報機器を調整する検出機構
3. 携帯情報機器の画面からイメージを受信し、携帯情報機器の画面の相対的サイズに基づいてイメージを調整するサブアセンブリー
から成るヘッドマウントディスプレイ
と実は結構範囲が広いので、気を付けていないと侵害してしまうかもしれません。なお、本件特許は米国のみで出願されたようなので、日本で製造販売しているだけであれば問題ないと思われます。