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米国大統領間連おもしろ商標登録出願について

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

前回書いたように自分の名前を含む商標を個人名義で多数出願している「俺様商標戦略」を採っている有名政治家がドナルドトランプ氏以外にいるかどうか調べてみましたが、調査範囲内では見つかりませんでした(こんなことをするのはトランプ氏くらいでしょう)。その過程で大統領(候補)関連の興味深い米国商標登録出願をいくつか見つけたのでここで紹介します(完全に小ネタです)。いずれも本人とは関係ない個人の出願です。

BARAK? OH BUMMER! (出願番号77420522、出願日2008年3月12日)

"bummer"とは米口語で「がっかり!」という感じのニュアンスの言葉です。「バラク(オバマ)にはがっかりだよ」ということですね。最近、日本において商標権獲得のためというよりは、自分の思いのたけを世間に伝えるために商標登録出願を連発している人がいるようですが、この出願はバンパーステッカーとTシャツを指定商品にしており、このフレーズを付けた商品を独占的に販売することが目的だったと推測されます。この出願は「バラクオバマの許可が必要」との暫定拒絶に応答しなかったため拒絶になっています。

HILLARY CLINTON IS POLITICALLY INCORRECT(出願番号78579134、出願日2005年3月3日)

Tシャツと帽子を指定商品にしており上記と同様にグッズ販売をしたかったのでしょう。上記出願と同様「ヒラリークリントンの許可が必要」との理由により暫定拒絶に応答しなかったため拒絶になっています。

BIN LADEN IS DEAD(出願番号85309412、出願日2011年5月2日)

これもバンパーステッカーを指定商品としており出願にサンプルが添付されています。出願人がどういう意図かは明らかではない(ステッカーに記されているwww.thankstoobama.orgのウェブサイトにもアクセスできません)のですが、おそらくは皮肉を込めているものと思われます(注:英語でthanks toの後にくるものは必ずも良い意味とは限りません)。この出願については、装飾的にすぎず識別性がないという暫定拒絶が発行され、それに応答がなかったため、拒絶が確定しています。ビンラディンはこの時点では死んでいますので「ビンラディンの許可を得よ」という暫定拒絶はあり得ません。かと言って、公序良俗違反で拒絶にすると一悶着ありそうなので、識別性なしという拒絶理由にしたのではないかと勝手に想像しています。

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弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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