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「新・民主党」の商標登録は可能なのか?

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
出典:民主党ウェブサイト

#本記事も(政治・経済ではなく)「エンタメ」カテゴリーとしました

「民主くん、ドクター中松に感謝 新党名で"失業危機"に配慮」という記事を読みました。

ドクター中松は7日に会見し、1989年に特許庁に商標登録している「新民主党」の登録を取り下げて無償使用を許可すると共に、新党名公募にもこの名前で応募したことを明らかにした。その会見でドクター中松は「民主くん(栗原注:民主党の公式ゆるキャラ)の失業も阻止できる」と付け加えた。

ということだそうです。

しかし、J-PlatPatで調べても当該の商標登録が見つかりません。ネット全体で調べると拒絶査定不服審判の記録が残っており、商願2012-89928として出願されていたことがわかりました。J-PlatPatで経過情報を調べると拒絶査定の後に不服審判も請求不成立で拒絶が確定しています。拒絶の理由は、他人の業務との混同を招く、既登録の「民主党」商標との類似等です。

中松氏がいう1989年の登録とはつじつまが合いませんが、ひょっとすると、それ以前にも登録されたものがあって、更新料未納により抹消されていたのかもしれません(抹消された登録は専門業者の有料サービスでないと検索できません)。特許でもそうですが、中松氏はせっかく権利取得できても、その後の料金納付を怠って権利消滅させてしまうことが多い(特許事務所を通さないで自己管理していると思われます)ので、このケースもそうなのかもしれません。

いずれにせよ、「新<既存政党名>」のような商標登録出願を第三者が行なっても登録される可能性はないと言えます(その政党自身が出願すれば別です)。

なお、本記事にはドクター中松氏を批判する意図はまったくありません(同氏にはネタとして楽しませてくださってありがとうございますと思っています)が、第三者が「新・民主党」といったような商標を登録できるのだという誤解が広まってしまうと困るので、客観的事実だけは明らかにしておこうという意図で書いています。

弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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