なぜ脱獄済iPhoneを販売すると逮捕されてしまうのか

出典:いらすとや

「脱獄iPhone販売者が商標法違反で初の逮捕 罪状に弁護士も"かなり意外"」という記事を読みました。ジェイルブレイク済のiPhoneをオークションで販売したことが商標権侵害に問われたということです。

記事でも問題になっていますが、多くの人はなぜ商標権侵害なの?と思ったことでしょう。もちろん、販売されたiPhone自体は正規で入手したものを(ジェイルブレイク後に)転売しているだけです。

「脱獄」行為がアップルやその他のアプリメーカーとの利用許諾違反になるのはわかります(この場合は民事なので警察による逮捕はあり得ません)。また、不正競争防止法(アクセス保護回避)違反、あるいは、(ちょっと無理筋ですが)著作権法の同一性保持権侵害ならまだわからないこともありません。

しかし、実は今回と類似の事件が比較的最近(2010年)にありました。海賊版ソフトを実行できるようにファームウェアを改変した任天堂Wiiをオークションで販売した者が商標権侵害で有罪となったケースです。刑事事件です。高裁で控訴が棄却された際の判決文が裁判所サイトに載っています。

判決文の要点だけを書くと以下のような感じです。

1) 一度正規ルートで購入した登録商標付き商品のその後の転売が商標権の侵害にならないのは、商標の出所表示機能と品質保証機能が損なわれていないから(これは以前からあるほぼ確定した考え方です)

2) 真正品の転売であっても「改変が加えられ,かつ,その改変の程度が上記出所表示機能及び品質保証機能を損なう程度に至っているとき」には商標権の侵害になる

大雑把に言うと「ファームを書き換えたWiiを売るのはパチモンのWiiを売るのと同じ」ということです。今回の逮捕の根拠もこの裁判例なのでしょう。

法律論としてのつじつまは一応合っているのですが、ちょっと腑に落ちないですね。お灸を据える的な意味が大きい逮捕であるような気がします。

そもそも、どこからが上記の「改変の程度が上記出所表示機能及び品質保証機能を損なう程度に至っている」にあたるのかが微妙なところです。たとえば、中古車屋がトヨタのクルマにチューニングを施して売ると、トヨタの商標権を侵害し得るということなんでしょうか?

追記:本記事は売った方の人の話ですが、共同通信によると、このiPhoneをオークションで買って「モンスターストライク」のゲームを改竄した人が私電磁的記録不正作出・同供用の疑いで書類送検されたようです。たぶん、オークションの入札記録から捜査されたのでしょう。こちらは、課金回避的なことをしていたとしたらしょうがないと思います。