キュレーションメディアは著作権侵害の責任を負わなくてよいのか

(写真:アフロ)

DeNAパレットをはじめとする名ばかりの"キュレーションメディア”が問題になっています(元々のキュレーションの意味していたところとは異なっていると思うので敢えてカッコ付きで表現します)。素人ライターにウェブ上の他人のコンテンツを寄せ集めた適当な記事を粗製乱造させ、SEOだけはがんばってGoogleの検索結果の上位に載せるという迷惑なビジネスモデルです。誤った情報や品質の低い情報を拡散してしまうと言う問題(これは医療系情報では特に問題です)もありますが、ここでは、著作権的な問題に絞って考えてみます。

第一に、著作権侵害という観点から見ると、他のブログ等から情報を切り貼りして"リライト”してしまうと、なかなか著作権侵害は問いにくいと思います(もちろん道義的な問題は別です)。

「風邪にはラーメンが効く」(あくまでも例)という考え方自体は著作権の保護対象ではないので、それをパクること自体は著作権侵害にはなりません。また、表現のバリエーションがそれほどない場合には表現が似ていたとしても著作権侵害にはなりません。著作権侵害となり得るのは比較的長い文章を表現まで含めてコピーしているようなケースです。そして、そのような書き方は避けるような指導がライター側に行なわれているようです。

ただし、写真に関しては、ほとんどの場合に著作物とされますし、ウェブ上に掲載された他人が著作権を有する写真を無断でコピーすることは、著作権侵害に相当する可能性が高そうです。実際、ストック写真の無断流用で損害賠償を命じられたケースは数多くあります。少なくとも大手の"キュレーションメディア”はこのあたりは気を付けているようで正規契約のストック写真を使っているように見えます。

もうひとつの論点として、仮に著作権侵害が認定されたとして、その責任はライターにあるのかキュレーションメディア側にあるのか(あるいはその両方にあるのか)という問題があります。

ここで重要になってくるがプロバイダー責任制限法(略称は「プロ責」、正式名称は特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)という法律です。これは、ISPやYouTubeなどのCGMサイトなどの自身でコンテンツを提供しているわけではない、通信サービス提供者(アクセス・プロバイダー)が他人の権利を侵害する(著作権だけではなく名誉毀損等も含まれます)情報を送信していても、一定条件下では損害賠償責任を免責されるという法律です。

第三条 特定電気通信による情報の流通により他人の権利が侵害されたときは、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下この項において「関係役務提供者」という。)は、これによって生じた損害については、権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能な場合であって、次の各号のいずれかに該当するときでなければ、賠償の責めに任じない。ただし、当該関係役務提供者が当該権利を侵害した情報の発信者である場合は、この限りでない。

一 当該関係役務提供者が当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知っていたとき。

二 当該関係役務提供者が、当該特定電気通信による情報の流通を知っていた場合であって、当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき。

YouTube等のアクセス・プロバイダーはプラットフォーム(場)を提供しているだけであって損害賠償責任を負うのは、コンテンツを提供した者であるという理屈です(ただし、差止めについてはアクセス・プロバイダーにも責任があります)。この法律がないとCGMサイトはビジネス上のリスクが高すぎてやってられませんので、今のインターネットの世界を作る上ではこの法律は重要な役割を果たしています。

しかし、いついかなる場合でも「場を提供しているだけなので賠償責任はない」という理屈が通るわけではありません。

参考になる裁判例として2009年のTVブレイク事件があります。TVブレイクは、TV番組の動画アップロードを売りにしていたCGMサイトですが、著作権侵害としてJASRACに訴えられました。裁判は知財高裁まで行き、TVブレイク側には約9,000万円の損害賠償が命じられています(一審判決文二審判決文)。

TVブレイク側はプロ責による免責を主張したのですが認められませんでした、理由は、「著作権を侵害する動画ファイルの複製又は 公衆送信(送信可能化を含む )を誘引,招来,拡大させ,かつ,これにより利得を得る者」とされたことで、カラオケ法理的な理屈により、アクセス・プロバイダーではなく発信者自身であるとされたことによります(上記条文の「ただし、当該関係役務提供者が当該権利を侵害した情報の発信者である場合は、この限りでない。」に引っかかったことになります。)

TVブレイクはサイトの作りとして、テレビ番組のアップロード前提の作りになっていたり、社長自らがブログでテレビ番組のアップロードをした話を書いていたり、権利者からのクレームがあってもなかなか動画を削除しなかったり等々、なかなかひどい状況だったので規範的に考えてプロ責で免責という形にはしにくかったのだと思われます。

では、今の”キュレーションサイト”はどうなのかというと、少なくとも大手はTVブレイクのようにはならないように(おそらくは法律専門家のアドバイスの下に)著作権侵害を誘引しているようには絶対見えないように工夫していると思われます。ということで、サイト側を著作権侵害で訴えてもプロ責で免責される可能性が大だと思います。ただ、大手以外では適当なところもあるかもしれません。

また、TVブレイク事件のように音楽著作権がからんでいる場合は、JASRACに権利が集約されていますし、JASRACの標準的な使用料金に基づいて損害賠償金額も算定しやすいので裁判する意味もあるのですが、文章の著作権場合にはそもそも難しいと思います。サイト側を訴えるにしろ、ライター側を訴えるにしろ、金額の算定が困難ですし、裁判費用を上回る賠償金が得られる可能性は低そうです。一方、写真の場合は、少なくともプロ写真家の方であれば、裁判に訴えるまでもなくクレームを上げたことで(サイト側から)ライセンス料金相当額を払ってもらえたケースもあるようです(ただ、これは大手の"キュレーションサイト"の話なので、もっとたちの悪いところだとしらばっくれられる可能性もあるかもしれません)。

ということで、"キュレーションサイト"問題の著作権法による解決はなかなか困難だと思います。個人的には、Googleのランキングアルゴリズムの改善により低品質の情報を排除できるようにすることが一番好ましいのでないかと思います。