偽大江戸温泉物語に対して本家は何ができるのか

出典:中国商標局データベース

[追記:すみません、一部事実誤認がありましたので修正を加えています。]

上海に大江戸温泉物語の偽物ができたことが話題になっています(参照記事)。上海の施設の運営会社(上海江泉酒店管理有限公司上海雲湯淋浴有限公司)は(別の中国会社の仲介により)営業ライセンスを得ていると主張していますが、本家大江戸温泉物語側はそのような事実はないと言っています。

上海の運営会社側が正規のライセンスを受けていると主張した根拠となった「公認証明書」なる書類も、日付はないわ、株式会社本家大江戸温泉物語の印影がモノクロで妙に薄いわ、中国語の文章内で!が使われているわで、企業間が正規に取り交わした文書とはとうてい思えません。

そもそも、本家大江戸温泉物語側が嘘をつく理由はまったくありませんので、上海の運営会社か仲介した会社(またはその両方)が嘘をついている可能性が高そうです。

上記の仲介会社である上海江泉酒店管理有限公司の名義で中国の商標登録出願データベースを検索して見ると、ことし7月に「台場大江戸」なる出願をしていたことがわかりました(上掲タイトル画像参照)。勝手出願とまでは言えませんが限りなくフリーライドぽいです。誠実に事業を行なっている会社とは思えませんね。また、くまモンの無断使用なども総合すると、この会社が善意の第三者として誠実に事業を行なっており、仲介会社に騙されただけであるというシナリオはちょっと考えにくくなってきます。ただし、くまモンの無断使用の件、日本に研修に社員を送ったことに関する主張の食い違いなども考慮すると運営会社も完全に善意の第三者として誠実に事業を行なっており、仲介会社に騙されただけであるというシナリオもちょっと考えにくいかと思います。

ところで、中国の商標登録出願データベースで見る限り、「大江戸温泉物語」の出願の記録はありません。中国は日本と異なり商標の出願公開制度がなく、ある程度審査が進まないと出願の内容が公開されませんので、既に出願されている可能性はあります。もし、本家より先に上海の運営会社または仲介会社が出願していたとすると、かなりやっかいなことになります(異議申立で無効にできる可能性はありますが時間がかかります)。老婆心ではありますが、中国人観光客にとって有名になった商品や施設の提供企業は、仮に現時点で中国進出計画がなくても早め早めに中国での商標登録出願を検討された方がよいと思います。

なお、本家大江戸温泉物語側の持株会社には米大手投資ファンドのベインキャピタルが入っていますので、ブランド価値の毀損には大変うるさいと思われますし、法務費用がかかることも厭わないと思われますので、徹底的に白黒をつけるのではないかと思います。

では、本家大江戸温泉物語側は、どのような措置を取れるのでしょうか。もちろん、裁判に訴えることもできますが、日本にはない中国特有の制度として行政(役所)に訴えることもできます。こうすることで、裁判よりも早期に決着を図ることができます。

この点で参考になるケースとして、2014年に起きた富士急ハイランドのお化け屋敷が中国企業にパクられた事件があります(参照記事)。その時も、最初に中国企業側は正規のライセンスを受けているという説明をしていましたが、結局、行政処分により、この中国企業には虚偽広告による過料(行政による金銭罰)と違法行為の停止が命じられることになりました(富士急ハイランドのプレスリリース(PDF))。

今回のケースも、日本の大江戸温泉物語と提携しているという宣伝文句が虚偽であることが明らかになれば、過料、および、場合によっては営業停止処分を早期に勝ち取れる可能性は十分にあるでしょう。

ただし、仮に、営業主体を移して再営業(今度は虚偽広告なし)ということになると、大江戸温泉物語の名称やロゴ使用差し止めは(本家側が中国で商標権を取得していない限り)困難になるかもしれません。(日本ではなく)中国国内での周知性を立証しなければいけないからです。類似店舗の使用についても同様です。