コメダ珈琲のそっくり店舗は名前が似てなくてもアウト

出典:株式会社コメダホールディングス開示情報

コメダ珈琲の郊外型店舗とそっくりの店舗を経営していた和歌山の喫茶店に店舗使用禁止の仮処分が命じられたというニュースがありました(参照記事)。コメダ珈琲の持株会社コメダホールディングズのウェブサイトにはもっと詳しい情報が載っています。この資料に両店舗の比較画像(上掲タイトル画像参照)が載っていますが、たしかに外形や色使いはよく似ています。郊外型店舗なので通常は車で行くことを考えると、遠目で見て間違えて入ってしまう人も多いように思えます。

フランチャイズ契約交渉が決裂した後に、そっくり店舗で営業を行なわれてしまったという経緯です。ひょっとすると建物が既にできていた後に交渉が決裂したというような事情があるのかもしれませんが、仮にそうであったとしても色使い等まで似せるのは誠実な商行為とは言いがたいと思います。

ここで重要なのは、店名(コメダ珈琲店vsマサキ珈琲)はまったく類似していないということです。当然ながら「コメダ珈琲店」の名称やロゴは商標登録されていますが、このケースではこの商標権は関係ありません。

店舗使用禁止の決定の根拠となったのは不正競争防止法2条1項です。

2条1項 他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し(略)他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為

この条文が適用されるためには、1) 店舗の外観が不競法上の商品等表示にあたること、2) 店舗の外観が類似すること、3) (コメダの)店舗の外観が消費者に周知であること、4) 消費者の混同が生じていること、という条件があります(類似してさえいれば権利行使できる商標権と比較してハードルが高いです)。

1)の条件については既に判例があります。2)の条件については、鳥貴族vs鳥二郎の時のように雰囲気が似ているだけであれば難しそうですが、今回のように類似性が強いと認められることもあるということなのでしょう。3)は正直自分にはピンとこないのですがたぶん都市型の店舗しか見たことないからでしょう。4)については何らかの証拠が提出されたものと思われますが、決定文が公開されていないので現時点では詳細不明です。飲食店業界では模倣されても泣き寝入りのケースが多い中で、仮処分で確定判決ではないものの興味深い判断です。

ところでコメダ珈琲店は、この郊外型店舗の外形そのものを立体商標として登録(第5851632号)しています。米国ではたまにあるパターンですが、日本だと珍しいかもしれません。登録はされたにせよ、この商標権に基づいて実際に類似店舗を排除できるかどうか(店舗そのものが商標法上の「商標」と解釈され得るか)は興味があるところですが、少なくとも、仮処分決定には、この商標権は直接的には関係ないようです。そもそもこの商標権に基づいた訴えが行なわれたのか、裁判所がこの商標権についてどのように判断したかは、決定文が公開されていないのでわかりません(重要な裁判については、仮処分の決定文が裁判所のウェブサイトで公開されることもありますが)。本訴の方が和解せずに判決文が出れば公開される可能性が高いのでそちらにも期待したいと思います。