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「忘れられる権利」完全無視の米国性犯罪者サーチサイト

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
出典:National Sex Offender Public Website

犯罪歴等のプライバシーにかかわる情報をサーチエンジンの検索結果から削除してもらえるかという、いわゆる「忘れられる権利」に関連した最高裁判決がありました(参考記事)。公共性を重視し、逮捕歴に関する記事の削除が認められませんでした。

要は、公益性とプライバシーを天秤にかけた、線引きの問題ということです。個人的には線引き問題として個別に対応すべきという考え方には賛成しますが、今回のケースは、児童への強制わいせつではなく「買春」であり、当人が既に家庭を持って普通に暮らしていることを考えると、削除に応じないのはちょっと酷ではないかという気がします。

さて、この機会に、前から気になっていた米国の性犯罪者データベースについてご紹介しましょう。もちろん、日本も同じようにすべきと言いたいのではなく、こういう国もあるのだという参考情報です。

米国では性犯罪者のデータベースを公的に管理し、ネット上で公開しています。ミーガン法と総称される法律が根拠になっています(参考Wikipdiaエントリー)。当然ながら、合憲なのかという議論はあるようですが、今のところは継続されています。

司法省のサイトであるNSOPW(National Sex Offender Public Website)では、名前と地域を指定したサーチができるようになっています(全件サーチはできません)。サイトデザイン(タイトル画像参照)が妙におしゃれなのがちょっと違和感があります。モバイルアプリも提供されているようです。

これに加えて、州別のサイトもあり、たとえば、ハワイ州のサイトでは事実上全件サーチが可能です。性犯罪歴がある人の本名、別名、顔写真(下の写真はぼかしかけましたがウェブ上では当然かかってません)、住所(Google Map付き)、入れ墨の箇所、等が公開されています(背景のハワイのさわやかな景色との落差が何とも言えません(この画像は私のPCのデスクトップではなくウェブサイト自体の背景画像です))。こんなことをされると社会復帰困難で自暴自棄になってますます犯罪に走ってしまうような気がするのですが。

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「人権派」の人には許せないでしょうが、現在の米国の性犯罪事情はきれい事を言ってられないようなものなのかもしれません。

弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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