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MtGOXが突然閉鎖 数年で74万BTC盗難され預かり資産を喪失か

楠正憲国際大学Glocom 客員研究員
MtGOXの取引停止を受け下落したBTC

2月7日からBitcoinの引き出しを停止していたMtGOXは、25日午前12時前(日本時間)にBitcoinの取引を停止し、全てのWebサイト上のコンテンツを削除した。国際的な大手Bitcoin取引所の破綻は初めてのことだ。同社は24日午後から全てのツイートを削除し、Bitcoin財団の役員を辞任するなど取引所の停止を準備していたとみられる。(1:35追記:MtGOXは最低限のWebサイトを再開、サイトと利用者を保護するために全ての取引の停止し、事態の推移を見守るとの声明を発表した。)

New York TimesBusiness Insiderが引用している漏洩文書によると、同社はMalleabilityに関連した盗難によって数年に渡って計744,408BTC (全Bitcoin流通量の約6%) を盗難され、現在は顧客からの預かり資産624,408BTCに対して2,000BTCしか保有していないとしている。

(2/26追記:Fox BusinessによるIRC上でのインタビューで、Mark Karpeles CEOはこの文書がMtGOXによって作成されたものであることを否定した。) "MtGox Situation Crisis Strategy Draft"と題する同文書でMtGOXは、110万口座と55万人の本人確認済み顧客、熟練したマネーロンダリング対策チーム、取引エンジン、日本語のワレットなどの資産を挙げ、事業の収益性は健全であることを計画で示した上で、他社の支援を受けつつブランドを再構築して4月1日にGOXとして事業再生を目指すとしているが、取引停止によって信用を大きく毀損している他、1月末に発表された米FinCENの新ガイドラインで取引所のソフトウェア開発が米銀行秘密法の規制を受けるなど事業環境は変化している。

日本時間の正午、Coinbase、Kraken、Bitstamp、BTC China、Blockchain.info、Circleの同業6社の経営者は共同で声明を発表し、「MtGOXが顧客の信頼を裏切ったことは同社の忌まわしい行為に過ぎず、Bitcoinや仮想貨幣業界の回復力や価値を反映したものではない」としている。MtGOX同様にMalleability問題で取引を停止したことのあるBitstampのBTC相場は、15時半に420USDまで下げたが午後11時現在500USD近くまで戻した。

しかしながらMtGOXの閉鎖は各国の規制当局や中央銀行が警告したように、Bitcoinに預金保険や投資家保護のための公的規制がかかっていないリスクが顕在化した面も否定し難い。法律による保護のない中で顧客資産を保全できるのか、Bitcoinや事業に対する顧客と規制当局の信認を得られるか、各社にとってこれからが正念場だ。MtGOXの今後は各国で検討されているBitcoinの法的位置づけや投資家保護の在り方を巡る議論にも影響を与えることになるだろう。

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Bitcoinについて 2014年2月

国際大学Glocom 客員研究員

インターネット総合研究所、マイクロソフト、ヤフーなどを経て2017年からJapan Digital DesignのCTO。2011年から内閣官房 番号制度推進管理補佐官、政府CIO補佐官として番号制度を支える情報システムの構築に従事。福岡市 政策アドバイザー(ICT)、東京都 DXフェロー、東京大学 大学院非常勤講師、国際大学GLOCOM 客員研究員、OpenIDファウンデーションジャパン・代表理事、日本ブロックチェーン協会 アドバイザー、日本暗号資産取引業協会 理事、認定NPO法人フローレンス 理事などを兼任。FinTech、財政問題、サイバーセキュリティ、プライバシー等について執筆。

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