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「M-1グランプリ2015」優勝は誰だ!?

ラリー遠田作家・お笑い評論家

11月19日、東京・EX THEATER ROPPONGIにて「M-1グランプリ2015」の準決勝が行われました。その日の夜に結果が発表され、8組の芸人が決勝戦に進むことになりました。この8組に敗者復活の1組を加えた9組が、12月6日の決勝戦に挑むことになります。決勝戦のネタ順は以下の通りです。

1.メイプル超合金

2.馬鹿よ貴方は

3.スーパーマラドーナ

4.和牛

5.ジャルジャル

6.銀シャリ

7.ハライチ

8.タイムマシーン3号

9.(敗者復活組)

さて、決勝戦はどういう争いになるのでしょうか。展開をずばり予想していきたいと思います。

まず、ファイナリストの顔ぶれを見ていて気付くのは、過去に「M-1グランプリ」や「THE MANZAI」で決勝に進んでいる芸人が多い、ということ。8組中7組がそれに当てはまります。どちらも経験がない「ノーマーク組」は1組だけ。それは、1番手に登場するメイプル超合金です。

マツコ・デラックスにも引けを取らない巨漢の女性芸人・安藤なつと、金髪で赤のツナギを身にまとったカズレーザーという異形のコンビ。自由奔放に飛び出す意外な角度からのボケが魅力です。

このコンビ、いまやライブではスベリ知らずの無敵状態。今大会の台風の目となる可能性は十分あります。唯一の懸念は、出番がトップであるということ。1組ごとに点数を付ける「M-1」の審査システムでは、基準ができる前の1番手にはどうしても高得点を付けづらいものです。その不利を補えるくらい圧倒的にウケることができるかどうかがカギになります。

また、2番手の馬鹿よ貴方はもメイプル超合金と同じくらいキャラの強い、不思議な雰囲気の芸人です。ひげ面で考古学者のような風貌の平井"ファラオ"光と、ニートの普段着のような衣装を身にまとった新道竜巳。見た目も印象的ですが、実は多彩なネタを持ち、意外と戦略的にネタを組み立てていくタイプ。メイプル超合金と同じくらいライブシーンでは注目のコンビです。

ただ、ここも2番手という順番が苦しいところ。2組続いて「正統派」ではない芸風なので、審査する側に「正統派を待って様子を見たい」という意識が働いてしまう可能性があります。

3番手はスーパーマラドーナ。ここでようやく関西の正統派漫才師が出てきます。彼らがどう評価されるかが勝負のポイントになります。このコンビが大ウケすれば、正統派が有利の戦い。逆に、ここがメイプル超合金や馬鹿よ貴方はに勝てなければ、正統派ではないタイプの芸人が有利になります。

スーパーマラドーナが高得点を取るようなことがあれば、銀シャリ、タイムマシーン3号など、その後に出てくる正統派の漫才師が有利になります。もちろん、関西芸人でしゃべりが達者な和牛ジャルジャルにもチャンスがあります。

逆に、メイプル超合金や馬鹿よ貴方はがスーパーマラドーナを抑え込むようであれば、力わざで強引に押し切るハライチなどが有利になりそうです。

敗者復活者は活躍できるのか?

また、敗者復活者が活躍できるかどうかも、そのときの空気次第です。例えば、正統派のナイツが来るとどうなるか、勢い重視のトレンディエンジェルが来るとどうなるか、どちらの空気になっているかで結果は大きく変わるでしょう。

漫才界の重鎮が主に審査員を務めてきたこれまでの「M-1」では、正統派の方が高く評価される傾向がありました。2010年大会では、正統派にこだわらずわざと間の悪い漫才を演じるジャルジャルのネタが厳しく評価されたこともありました。

ただ、今回は審査員の顔ぶれも変わり、そのあたりの評価も今までとは違ってくる可能性があります。何しろ、審査員9人はいずれも、自分たちが「M-1」を勝ち抜いてきて、勝者の栄光も敗者の悲しみも知り尽くしています。1番手だから不利だとか、正統派じゃないから評価されないとか、そういうことにとらわれずに公平な審査をしてくれることも期待できるのです。

「M-1グランプリ2015」決勝戦は、12月6日(日)18:30から、テレビ朝日・朝日放送系全国ネットで放送されます。新たな王者はいったい誰になるのでしょうか。

作家・お笑い評論家

テレビ番組制作会社勤務を経て作家・お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など、多岐にわたる活動を行っている。主な著書に『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)、『この芸人を見よ! 1・2』(サイゾー)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある。マンガ『イロモンガール』(白泉社)では原作を担当した。

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