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今年の『R-1』はひと味違う!――『R-1ぐらんぷり2016』準決勝レポート

ラリー遠田作家・お笑い評論家
永野

2016年2月25日、ひとり芸日本一を決める『R-1ぐらんぷり2016』の準決勝が行われた。東京・ラフォーレミュージアム六本木と大阪・なんばグランド花月の同時開催。会場同士を中継映像でつなぎ、それぞれの会場に訪れた観客は、42人の芸人のネタを見ることになった。

この『R-1』に限らず、『M-1グランプリ』でも『キングオブコント』でも同じなのだが、この手の大型お笑い賞レースでは、決勝の一歩手前の準決勝が一番見応えがあって面白い。ここまで厳しい予選を勝ち抜いているだけあって、申し分のない実力を備えた芸人ばかりが揃っているからだ。

今年の『R-1』準決勝進出者の顔ぶれを見ると、例年とは傾向が変わっていることに気付く。それは、普段コンビで活動している芸人が少ない、ということだ。これまでの大会では、2015年に決勝に進んだアジアン・馬場園、NON STYLE・石田、2012年に決勝に進んだチュートリアル・徳井、千鳥・大悟など、コンビとしての活動が多い芸人の活躍が目立っていた。

ところが今回は、そういう芸人が比較的少ない。2015年に『キングオブコント』で優勝して勢いに乗っているコロコロチキチキペッパーズ・ナダルも出場していたのだが、3回戦で敗れている。今年の『R-1』では、芸人の知名度や話題性はほとんど考慮せず、純粋にネタの面白さだけを評価の対象にしているのかもしれない。

実際、厚切りジェイソン、小島よしお、あばれる君といったそれなりに名の知れた芸人も準決勝には残っていたのだが、彼らは自分のネタできっちり笑いを取っている。つまり、知名度だけで上がってきたわけではないのだ。もともとネタの面白さだけが審査基準になっているというのは当然なのだが、今年は特にその基準が厳しく守られているように感じられた。

それは、予選に挑む芸人たちの姿勢からも感じられる。とにかく明るい安村は、昨年大ブレークした"裸芸"ではなく、別のネタを演じた。「BKB」の愛称で知られるバイク川崎バイクは、テレビでもお馴染みの漫談スタイルを封印して、毛色の変わったネタを披露していた。また、フリップネタを得意としており、5年連続で決勝に上がっているヒューマン中村も、今回はフリップネタ以外の形のネタを演じていた。彼らのような実力も実績もある芸人たちが、新しい形のネタで勝負に出ている。これもまた、今年の『R-1』が例年になく厳しい戦いになっていることの現れだろう。

それ以外にも、最近ネタ番組での活躍が目立つ脳みそ夫、ZAZY、アキラ100%、昨年ブレークした永野、豪快なネタでカルトな人気を誇るハリウッドザコシショウなど、強豪が数多く揃っていて準決勝は大いに盛り上がった。決勝進出者9人は、2月29日(月)に発表される。

ハリウッドザコシショウ
ハリウッドザコシショウ
作家・お笑い評論家

テレビ番組制作会社勤務を経て作家・お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など、多岐にわたる活動を行っている。主な著書に『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)、『この芸人を見よ! 1・2』(サイゾー)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある。マンガ『イロモンガール』(白泉社)では原作を担当した。

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