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ノート(14) 特捜検事が手錠をかけられ、拘置所に押送された時

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:アフロ)

~葛藤編(11)

逮捕当日(続)

手錠と腰縄

 逮捕状の執行や被疑事実に対する弁解の録取、所持品の捜索や差押えといった一連の手続が終わり、いよいよ大阪拘置所に向かうこととなった。

 検察によって逮捕された被疑者は、政治家や官僚、会社幹部や芸能人など誰であっても、ここで初めて「輪っぱ」と呼ばれる手錠をかけられることとなる。

 逮捕状を示されたことで「逮捕」という手続は終わっており、法的には既に身柄拘束下にある。しかし、被疑者自身が「ああ、ついに逮捕されてしまった」という実感を覚えるのは、まさしくこの“手錠をかけられる”という瞬間にほかならない。

 手錠というと銀色というイメージがあるかもしれないが、実際には黒色だ。鍵は2重ロック式で、根元の部分には「腰縄」と呼ばれる2本の青いロープが固く結び付けられており、手錠をかけた後、このロープを被疑者の両脇から回し、腰あたりでガッチリと締め付ける。

 その上で、押送を担当する係官がロープの先の部分を自分の手に二重三重に巻きつけてしっかりと握り、被疑者の後方から「右」「左」「まっすぐ」などと進行方向を告げ、移動するという仕組みだ。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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