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ノート(16) 「自殺防止房」に入ってみて分かった“人質司法”の問題

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:アフロ)

~逡巡編(1)

勾留初日

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 再び横になったものの、未明に牢屋主に起こされたことで目が冴えてしまい、眠れなくなった。そこで、薄ぼんやりとした蛍光灯の明かりの下で、改めて幅2m、奥行き4mほどの「自殺防止房」の中を見回してみた。

 やはり部屋を取り囲む白いコンクリートの壁には物を引っ掛ける突起物がどこにもなかったが、一つの面を見ると、1枚のカレンダーが貼り付けられているのが分かった。7月から12月までの6か月表記で、矯正協会が発行しているものだった。

――ずいぶん露骨な癒着(ゆちゃく)だな。

 この矯正協会は、もっぱら刑務所や拘置所といった矯正施設の職員らを会員とし、元幹部や元職員らが数多く天下ってきた団体だった。今でこそ改善されたが、以前は法務・検察官僚の天下りポストでもあり、トップの会長職は「元検事総長の指定席」とも揶揄(やゆ)されていたほどだった。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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