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ノート(17) 常識が通用しない拘置所における知られざる独自のルールとは

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:アフロ)

~逡巡編(2)

勾留初日(続)

所内生活のしおり

 いつの間にか夜が明け、室内に外光が差し込んできた。築50年超と老朽化しているからか、真っ白だと思っていた部屋を取り囲むコンクリートの壁が、実際にはかなりくすんでおり、やや灰色がかっていることが分かった。

 ところどころに黒いシミや血でこすったような跡もあったし、何を意味しているのか、目立たない隅のところに鉛筆で象形文字のような記号がいくつか書かれていた。畳と壁の隙間や畳同士の隙間には、ほこりや砂、チリ紙の破片、髪の毛などがビッシリと詰まっていた。

自殺防止房の状況(イメージ)。縦横の寸法などは実際と異なる。中に入るとかなり狭く感じる
自殺防止房の状況(イメージ)。縦横の寸法などは実際と異なる。中に入るとかなり狭く感じる

――これまで一体、何人の人間がここに収容されてきたのだろう。彼らはどのような思いで日々を過ごし、どうやって正気を保ってきたのだろう。

 そうしたことを考えるうち、ふと壁際の脱衣カゴを見ると、中にA4サイズの冊子が入っているのに気づいた。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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