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ノート(18) 改めて正式な新入調査を行い、勾留質問のために裁判所へ

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:アフロ)

~逡巡編(3)

勾留初日(続)

点検

 突然、壁のスピーカーから軽快なマーチ風の音楽が流れ、ほぼ同じタイミングで航空機の爆音が響いた。室内に時計はなかったが、起床時間だと分かり、「所内生活のしおり」に書かれている手順で布団をたたみ、所定の位置に置いた。

 すぐに「点検」ということになっていたので、顔を洗って歯を磨き、枕をくるんでいたドブネズミ色の舎防着(しゃぼうぎ)を着て身支度を整え、板敷きの手前あたりで監視窓に向かって座った。

 あぐらをかく安座でもよいということだったが、背筋をピンと伸ばし、正座して黙想し、刑務官を待った。点検とは、刑務官がペアを組み、手もとの名簿と照らし合わせながら、「1室、1名」「2室、1名」「3室、空室」などと言って、順に在室状況を確認していくというものだ。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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